耐火性能を持っているLGS壁には様々な種類が製品として用意されていて、建物の用途とか壁に求められている性能に合わせて選定することが出来るようになっています。
同じ耐火性能が必要な壁であっても、場所や条件によって何を優先するのかは結構違ってきます。
例としてそうした状況の違いを挙げてみると…

・遮音性能が必要な部屋に耐火性能も必要な場合もある

・耐火性能にも法的な制約がある(1時間耐火・2時間耐火)

・竪穴区画に設ける耐火壁なので石膏ボードは片面としたい

・廊下に面している壁なので表層は硬質な石膏ボードとしたい

・最低限の耐火性能さえクリアしてコストを優先したい

こんな感じで、それぞれの場所で様々な条件というか要望がある訳です。
コストを優先したい場合もあるし、性能を重視する場合もあるし、表層のボードにこだわる場合もあるし、施工性を優先する場合もある。

その状況は場所によって違うので、LGS壁で耐火性能が必要な場合はこの仕様を選定しておけば間違いない、というようなタイプはあまりないんです。。
こうした「ひとまずこの製品を選定しておけば間違いない」というスタンダードがあると、確かに仕事としては楽になりますよね。

そうした製品があれば色々な条件を考えなくて済むので楽なんですけど、それだよ仕事としての面白みは半減してしまうのではないかと思います。

建物の場所によって必要な条件が色々と違ってきて、そうした要素をしっかり考えて、その結果として選択される回答。
もちろんそれが最善かどうかの保証はなく、今までの自分の経験や、会社が積み重ねてきたノウハウをフル活用して最善を目指していく。

時にはそれが間違っている場合もあるかも知れませんが、そうした流れが仕事の面白みではないでしょうか。
考えた末の間違いであれば何が原因だったのかがすぐに分かるはずで、それを覚えれば次回は同じ失敗をしにくくなります。

そうした学びもやはり仕事の醍醐味ではないかと思います。
もちろん仕事に対するスタンスは人によって全然違うので、全ての方が私と同じ考え方をするべきという訳ではないですが…
そうやって取り組んだ方が面白いんじゃないかと私は考えています。

少しだけ話が逸れてしまいましたが、今回は多種多様に存在する耐火性能を持っているLGS壁の中から、一例としていくつかを紹介してみたいと思います。

■耐火遮音壁の一例

耐火性能が必要な壁で、なおかつ遮音性能が必要になるという状況は結構たくさんあります。
以前の説明でも少し取り上げましたが、例えばマンションの住戸間の壁などは高い遮音性能が必要とされます。
その場合の選択肢の一つとして、以下の耐火遮音LGS壁があります。

http://yoshino-gypsum.com/kouhou/taika/taika04.html

石膏ボードを張るためのLGSが一直線ではなく、少しずらして(千鳥に)建てられている、というのがこの耐火間仕切の特徴になっています。
なぜLGSを千鳥で配置しているのかというと、それぞれの面に張ってある石膏ボード同士が物理的につながらないようにするという目的があるから。

音を通したくない場合もある

音というのはシンプルに考えれば単なる空気の振動で、その振動が伝達することによって音が伝わっていくことになります。
LGSを下地として石膏ボードをLGSの両側に張っていくと、当然石膏ボードとLGSが密着している状態になりますよね。

そうなると、空気の振動がどうしても壁の反対側に伝わりやすくなってしまいます。
LGSに対して両側に張っていく石膏ボード。
それぞれの面に張られる石膏ボードの下地が連続していない状態になっていれば、空気の振動が伝わりにくくなります。

つまり、部屋の中で発生した音が隣の部屋に伝わりにくくなり、その結果として遮音性能がある壁と認められる訳です。
遮音性能にはいくつかの等級があって、より遮音性能を求められるほど、こうしてLGSを千鳥に配置する壁構成が増えてきます。

■一般的な耐火壁

ただ、建物内に存在する壁のすべてに遮音性能が必要という訳ではなく、そこまでの性能は必要ない、という部屋もたくさんあります。
例えば倉庫と廊下の間の壁とかを遮音しても、通常時にあまり人がいないような部屋なのであまり効果的ではありません。

遮音性能を持っている製品は、遮音性能を持たない製品よりも高額になるので、必要のない場所に高スペックの壁を選定するのはもったいないです。
少なくとも私が施主であれば、そんな「大は小を兼ねる」みたいな設計をされたら腹が立つと思います。

プロであれば適材適所でコストを意識した設計をして欲しいもので、そんな場合の一般的な耐火壁はこちらになります。

http://yoshino-gypsum.com/kouhou/taika/taika01a.html

一例を挙げようと思っていたら、強度が必要な耐火壁とか一般的な耐火壁とか、色々な種類が一気に紹介されています。
それ以外の耐火壁については次回に紹介します。