前回はLGS壁が持っている耐火性能について注目して、実際の製品としてどのようなものがあるのか、一例を紹介してみました。
同じ耐火性能を持っている壁であっても、遮音性能があるタイプとそうでないタイプでは、壁の構成が大きく違っていることが伝わったかと思います。

壁の厚みもかなり違ってくるし、当然コストも大きく違ってくることになります。
後で変更するとコストに響いてくるため、特に高いスペックを持っている壁に関しては、必要な範囲を先に決めておくのが良いです。

耐火性能が必要な壁は建物の規模や場所によって様々ですが、国が定めた建築基準法によって厳密に決められているものです。
そうした規定を守るために、LGS壁は製品として様々なバリエーションを持っている訳です。

建物に求められる要素として、もちろんデザインも非常に重要な要素のひとつだと思いますが、それは基本的な性能を満たしてはじめて考えることです。
建物を建てる側から求められる性能を満たしつつ、デザインも優れている建物をつくる。

これが理想的ではないかと思います。

建物に求められる性能には様々な要素がありますが、その中の重要な要素として「定められた法律を遵守した建物を建てる」というものがあります。
これは結構当たり前の話ではありますが、国が定めた法律に沿って建物をつくっていく必要がある訳です。

そうした条件を満たすために、耐火性能を持ったLGS壁が活用されることになります。
通常使用している一般的なLGS壁ではなく、少し性能の高いLGS壁を採用することによって、耐火性能が必要という法的な条件を満たすことが可能になる。

これは建物を設計する側としても、建物を施工する側としても、手軽に耐火壁を構成することが出来るので、非常に助かるんですよね。
と言うことで、今回はもう少しだけ耐火性能を持ったLGS壁について具体的な製品を紹介していきたいと思います。

■片側だけの耐火壁

前回紹介した耐火壁はごく一般的な納まりの壁でしたが、こうした一般的な納まりが施工上出来ない場合もあります。
もう少し具体的に言うと、施工する場所によってはLGS下地に対して両側に石膏ボードを貼ることが難しい場合がある、ということです。

以前防火区画について説明をした際に出てきた「竪穴区画」というのは、基本的にエレベータや階段など、床に穴があいていて下から上までつながっている状態になります。

ELVシャフトの一例

建物全体で縦方向に穴をあけておき、そこに階段やエレベータなどを設置していくことで、フロア間の移動をしていく訳です。
そうした場所に採用が検討されることが多い耐火壁がこちら。

http://yoshino-gypsum.com/kouhou/taika/taika01b.html

LGSに対して片側に石膏ボードを貼れば耐火壁として成立し、反対側には何も貼らなくてOKという優秀な性能を持っています。
特にエレベータなどの場合、エレベータシャフト側に石膏ボードを貼るのは結構大変な作業になります。

もちろん出来ない訳ではないです。
しかしわざわざそこで手間のかかる作業をする必要があるのかを考えると、そこまでの必要性はない、という結論になる訳です。

シャフト側には床がないですから、石膏ボードを貼る為には最下階の床から作業用の足場などを用意する必要があるんです。
しかもその足場がある間はエレベータを設置する工事が出来ないというデメリットもあって、工程を考えてもあまり灌漑されない状況になります。

そうした手間とか工程などを考えると、床がある側だけボードを貼ることで終わらせたい、と思ってしまいます。
そんな要望に応えるのが、今回紹介したSウォールという耐火壁になります。

これは私の今までの経験上、結構採用される確率が高いLGS壁で、きっと建築の仕事をしていればお目にかかることがあるはずです。

■Sウォールの欠点も

ただ、何もかもが優れている製品なんてあるはずなくて、もちろんSウォールにも欠点があります。
欠点として考えられるのは、シャフト側に石膏ボードがない状態のLGS壁なので、遮音などの性能を持たせることが難しいということ。

厳密に遮音性能を指定しない場合でも、例えばトイレと廊下の壁などの「音を伝えたくない壁」には、LGSの中にグラスウールを充填したりします。
そうすると、何もしないLGS壁に比べると、グラスウールが音を吸収してくれるので、音が伝わりにくい壁になります。

遮音等級いくつの遮音性能壁、という分類は出来ませんけど、それで充分という部分も結構あるんです。
だけど片面しか石膏ボードを貼らないSウォールの場合、LGSにグラスウールを充填してもあまり効果がありません。

片側しか石膏ボードを貼っていない状態ですから、石膏ボードがない側からすぐにグラスウールが落下してしまうんです。
反対側に石膏ボードが1枚でも貼ってあれば、それに押さえられてグラスウールはLGSから出ることはないのですが…

そうなると結局シャフト側からの作業が必要になるので、わざわざSウォールを選択する意味があまりない状況に。
というような欠点はあるものの、実際の選択肢として充分検討の余地がある耐火壁なので、覚えておいて損はないと思います。