建物をつくっていく中で各所の納まりを検討していく際に、床仕上材と床下地の関係については出来るだけ早めに検討しておく必要があります。
どうしても仕事にかけることが出来る時間には限りがあるので、その中で本当に重要なことから手を付けていく必要がある訳ですが…

床仕上材と床下地との関係は仕事に優先順位の中で結構高い順位にいる、というような話を前回は紹介しました。
もちろん建築に関わる仕事とは言っても、どんな立場で仕事をしているかは人によって少しずつ違っているものです。

なので、今これを読んでいる全ての方が床仕上材の納まりを検討しなければならない、という訳でもないんですけど…
それでも知識として「これは急ぐ」という現実を把握しておくのは悪いことではないはずです。

まあ実際に仕事で時間に追われていると、この優先順位を調整しながら綱渡りをしていくのが結構大変なことでもあります。
それはどんな立場の方でもきっと同じなので、プロとして求められるスキルを存分に発揮していくしかありません。

大体の場合、自分が持っている能力を120%くらい出さないとこなせない程度の仕事が与えられるんですよね。

床仕上材を固定するための床下地というのは、人が上に載るという性質から、どうしてもコンクリートで施工をせざるを得ない部分です。
だから早めに検討していき、まずは床コンクリートのレベルを決めていく必要があります。
そして、それは単なる床コンクリートのレベルだけの話ではありません。

例えば最近多い鉄骨造の場合には、床コンクリートのレベルを下げるということはつまり、鉄骨梁のレベルも下げなければならない、という場合もあります。
そうなると梁のレベルを下げるしかなくて、さらに絡む部分としては、下げた梁が取り合う柱の納まりも変わってくるという状況になることも。

こうしてひとつの納まりを変えただけで、各所に影響を与えることも結構あるんです。
このあたりの詳しい話は後で図を交えて説明しますが、床コンクリートのレベルを変えることによって発生する影響は決して小さくはありません。

鉄骨造(S造)ではなく鉄筋コンクリート造(RC造)であればもう少し楽ですけど、それでも鉄筋の納まりなどを考えると影響が少ないとは言えません。
もう少し言えば、床コンクリートレベルが変わってしまう可能性がある状況は避けたいので、出来るだけ早めにこうした問題はクリアしておいた方が良いです。

ちょっといきなり複雑な話から始めてしまった気もしますが…
まずは手始めに、代表的な床仕上材にはどんなものがあるのかを、簡単にではありますが紹介してみましょう。

■タイルカーペット

基本的に床仕上材というのは「コンクリート下地に仕上材を貼っていく」というパターンが結構多くなってきます。
というか、ほとんどの床仕上材がその納まりになっている、と言っても良いくらいの割合かも知れません。

例えばコンクリートスラブを打設した上にタイルカーペットを貼ったり、長尺塩ビシートを貼ったりという納まりです。
こうした納まりは床仕上材の基本納まりになるので、まずはこの基本パターンを覚えておきましょう。

コンクリートスラブの上にタイルカーペットを貼るというのは、まずはイメージとして例を紹介するとこんな感じになっています。

タイルカーペットの施工例

これはオフィスとかホテルなどで見かける床仕上材で、市松模様みたいに見えるのは大抵タイルカーペットです。
一般的すぎてあまり意識しないかも知れませんけど、それだけスタンダードになっている床仕上材だとも言えるかも知れません。

■ビニル床シート

タイルカーペットと同じくらいメジャーな床仕上材としてはビニル床シートがあります。
こちらも床コンクリートに直接貼っていくタイプの床仕上材になりますが、ビニル床シートの見た目はこのようなイメージです。

ビニル床シートの施工例

この床仕上材も建物の中で本当によく見かけるものです。
関係性としては、床コンクリートを打設した上に、ビニル床シートを接着剤で貼って固定していく納まりになります。

タイルカーペットに較べてやや薄い仕上げ材なので、下地のコンクリートをどうするか悩む場合も時々あります。
そのあたりの話は後ほど詳しく説明していくことにして、まずは見た目のイメージをここでは覚えておくことにしましょう。

■床タイル

床仕上材の一例として最後に紹介するのは床タイルです。
これは今まで紹介してきた床仕上材とは少し質感が違っていて、最終的な見た目が非常に洗練されている床仕上材になります。
床タイルのイメージはこんな感じ。

床タイルの施工例

床タイルの固定方法はカーペットとは少し違って、モルタルやセメントペーストで下地の床コンクリートに接着という納まりです。
タイル自体にある程度の厚みがある関係で、タイルカーペットやビニル床シートとは納まりの考え方が少しだけ違ってくるのが注意点です。

しかし当然ですが、表面の仕上レベルはタイルであってもタイルカーペットであっても、きっちり同じにしておく必要があります。
そうしないと、床仕上材としてタイルとタイルカーペットが切り替わる部分で、微妙な段差が出来てしまい躓きの原因となって危険です。

このあたりを考えて、下地をどうしておくかを決めていく。
これが床仕上材の納まりを検討するということなんです。
結構面倒で手間の掛かる作業ではありますが、実際に床仕上材を施工する段階で問題が発覚すると困るので、なるべく先に手を付けていくことをお勧めします。