床塩ビシートを施工する際には、床下地としてコンクリートがまずは施工されていて、そこに直接接着剤で貼っていくやり方が多いです。
なぜ多いかというと、そのやり方が一番シンプルで手間が少なくて済み、結果としてコストもかならないやり方だからです。

ただ、床下地コンクリートに直接床塩ビシートを貼ることになる、という部分がポイント。
下地の施工精度があまり良くない状態で、その結果コンクリートの表面が凸凹していると、その凸凹がそのまま床塩ビシートに出てきてしまう恐れがある。

これが、いわゆる「直貼り」と呼ばれる施工方法のリスクです。

床下地コンクリートに直接貼る訳ですから、下地の精度がそのまま仕上の表面に出てしまうというのは仕方がないことだと言えます。
ただ、あまりにも下地の精度が悪い場合には、やっぱり当然というべきか、床塩ビシートの表面の精度も悪くなってしまい、ちょっと見るに堪えない状態になる場合もあるんです。

そうした状態にならないためにも、セルフレベリング材を使用して、床下地を平滑にしておくというやり方を前回は紹介しました。
施工者側の考え方としては、やはり余計な手間とコストがかかることですから、出来ることならばセルフレベリング材はやりたくないという気持ちにどうしてもなります。

とは言え、自分たちが施工したコンクリートの精度があまり良くない場合もある、ということも分かっているのが微妙なところ。
それならばセルフレベリング材を施工した方が楽かも…というような気持ちもあって、そこにコストが絡んでさらに複雑な気持ちになる場合も。

しかしやっぱり余計なコストはかけずに施工を進めたいので、出来るだけ精度良く床コンクリートをつくっていきたい、というのが施工者側の気持ちではないかと思います。

■計画は早めにしておく

セルフレベリング材の有無についての方針は、基本的に設計図に記載があるかないか、これが最も重要な判断基準になります。
設計図に記載されている場合には、見積に入っているので余計な出費ということにはなりませんが、そうではない場合は契約外ということになります。

この方針は床コンクリートの天端レベルに関係してくるので、こうした基本的な部分は早めに検討しておいた方が良いでしょう。
実際のところ、床コンクリート打設時の精度が悪くて余程凹凸になっていない限りは、床の不陸が気になるケースは少ないと個人的には思っています。

しかしそれは設計する側や施工する側の意見であって、建物を利用する側の立場に立った意見では残念ながらありません。
自分の家で床を施工する際に、ある程度の不陸は気になりませんよ、と言えるかどうか。
これをよく考えてみると、少なくとも私は「全然問題ないです」とは言えない気がします。

実際自宅の工事を頼んだ際には、冷蔵庫と壁の隙間が平行になっていない状態が非常に気になったという経験もありますし。
自分でお金を出して建物を造っていく際に、完成した状態を見て「別に気にならない」と言えるかどうかは微妙なところでしょう。

お客さんの立場でものを考える際には、そのあたりの感覚が結構大事になってくるんじゃないかと思います。
今回で床塩ビシートについての説明は終わりになりそうですが、今回はジョイント部分について考えてみたいと思います。

■ジョイントの処理方法

床塩ビシートというのは別名「長尺シート」と呼ばれ、約1.8m巾で18mのロール状になっている仕上材です。
だから一気に大きな面積を施工できる訳ですが、もちろん1つのロールだけで部屋全部を仕上げることは出来ません。

その場合、同じ床塩ビシートを継ぎ足して施工をすることになりますが、その継ぎ目をどう処理するのか、という話があります。
やり方は以下のように幾つかありますが、最も多いのが熱溶接工法です。

・熱溶接工法

・瞬間接着剤で固定

・シール

溶接工法というのは、突き合わせた床塩ビシートをV字型またはU字型に溝切りして、そこに溶接棒を使って熱溶接して繋げていくやり方です。
そして、その後はみ出した部分をカットすればジョイントの処理は完了です。

■熱溶接工法の納まり

こうした床塩ビシートのジョイント処理というのは、実際には建築の納まりにはあまり関係ない部分ではあります。
ただ、同じ系統の色で溶接される為、あまり目立たないとは言っても、違う材質のラインが入ることになるのは間違いありません。

なので床塩ビシートのジョイント部分がどういう納まりになるのか、どんな見た目になるのかを知っておくことは大事なことではないかと思います。
ここにはジョイントを入れたくない、などのこだわりがあり過ぎると、ちょっと施工者側からイヤな顔をされるかも知れませんが。

意匠設計者であれば、ある程度のこだわりがあっても良いんじゃないかと私は思っています。
あくまでも「ある程度の」ですけど。
床塩ビシートの特徴や納まりについての話はこれで終わりにしますが、最後にジョイント部分の断面図を簡単に紹介しておきます。

床塩ビシートの熱溶接工法納まり

ジョイント部の見た目はこんな感じで、あまり目立たないのでそれ程気にならないのではないかと思います。

床塩ビシートのジョイント例

この目立たなさですから、ジョイント位置を「ここにしたい」とかの要望を出すと、やっぱり施工者から嫌がられるかも知れませんね。