前回はタイルの大きさと目地との関係について話をしてみました。
タイルの大きさ表記は一般的に「目地込み」で書かれていることが多く、100角タイルと言っても実際には目地の巾を引いた大きさになっています。
呼び方と実際の寸法が違うというのは、慣れてしまうまではちょっと分かりにくい話なんですけど、建築の世界では結構あったりします。
例えば鉄筋コンクリート造(RC造)の建物で使われる鉄筋では、呼び方はD10とかD13などとなっていますが、実際の外形は少しずつ大きいです。
これは鉄筋の表面が凸凹しているので、よくよく考えてみれば当然のことというか、納得することが出来ると思います。
また、雨水などを流す際に使われる塩ビ管も、50mmという規格であれば外形は60mmになっています。
これも、配管なので内径で50mmを確保することになって、塩ビの肉厚をプラスすれば大きくなってしまうのは仕方がありません。
という感じで、呼び方と実際のサイズが違うことは結構あるんです。
なぜその呼び方とサイズになっているのかを理解すれば、恐らく自然とそうした関係に慣れていくことが出来るはずです。
タイルの話に戻ると、タイルサイズの呼び方は実際のタイルサイズ+目地巾になるので、まずはそこを確実に押さえておきたいところです。
これをカタログで確認しておき、なおかつ実際のタイルを取り寄せて測っておかないと、後になって「サイズが違いました」となる場合もあるんです。
カタログにはしっかりと寸法が表記されているので、そこでしっかりと確認ができていれば恐らく問題はないと思います。
しかし念の為ということで、本物のタイルがカタログ通りなのかを確認してみることも、かなり重要な作業なんです。
実際に採用するタイルであれば、間違いなく施工前にサンプルとして本物が用意されるので、それを測るだけで簡単です。
カタログが分かりにくい場合もあるし、特に余分な手間がかかるわけでもないので、まずは実物でサイズの確認をしておくことをおすすめします。
■ちょっと雑談
タイルのサイズは大抵の場合が目地巾を含めた寸法になっていて、カタログを見ればそれも確認することが出来る。
だから確認さえしておけば間違えようがない、ってなるとは思いますが…
ところがどっこい(古いですね)現実はそんなにスムーズには、というか普通の手順どおりにはいかないこともあるんです。
時には、ですけど。
いつもと一緒だから大丈夫だろうと油断していると、時々信じられないくらい初歩的な失敗をすることもあります。
例えば、前回書いたタイルのサイズについての話ですが、目地込み寸法なのかタイル実寸なのかの間違いを私は一度やっています。
目地込みだと思って寸法を検討していたら、実際にはタイル実寸になっていて、あらゆるところが納まらない状態になるという。
そうなったあとで「どうしてこのタイル割りにしたのか」についての質問に答えるのは、今思い出しても非常にツライものでした。
タイルなんだから、使う製品が目地込み寸法なのか実際のサイズなのか、普通は最初に確認するものだよね?
そう言われてしまうと、というか言われましたが、その通りすぎて返す言葉も何もありません。
そういう恥ずかしい失敗をしない為にも、最初に覚えたことは仕事に慣れた後でもきちんと実行したほうが良い、という話でした。
●タイルの割付をどうするか
こうして床タイルが目地込み寸法なのか、それとも実寸なのかを確認することにいったい何の意味があるのか。
そう思う方もいるかも知れませんが…
床タイルを施工する際には「割付」が意匠的には重要な要素なので、割付をするためにタイルの大きさと目地巾が必要になってくるんです。
タイルというのは決まった大きさの部材を連続して貼っていくものですが、どの面に貼るのか、という範囲は決まっています。
そうすると、その範囲の中にタイルをどのように配置していくのか、という見せ方が問題になってきます。
部屋の真ん中にタイルを貼っていくのか、それとも部屋の端からタイルを貼っていくのか、それとも他に基準があるのか。
これは設計段階ではそれほど考えなくても良いことですが、実際に施工をする段階では色々と考えなくてはいけません。
部屋の大きさは決まっている訳ですから、どこから貼り始めるのかによっては、部屋の端で中途半端な隙間が発生します。
そうなるとタイルをカットして貼ることになる訳ですが、余りにも小さいタイルが入ってしまうのは意匠的に変なので避けたいところ。
だから出来るだけ変なところがないように、タイルを貼る前にあらかじめどんな状態になるかを検討しておく必要があるんです。
こうした図面を「タイル割付図」と呼びます。
床は大きなタイルが多くて、壁と較べると割付についてあまり厳密に調整しないでも良いこともあります。
だけど、少しの調整でタイルがキッチリ貼れるのならば、事前に検討して調整をしておいた方が良いと思います。
タイル割付図が実際にどういうイメージになるのかは、次回に改めて説明をしてみます。