前回は床仕上材のひとつである塗床について、どのような特徴を持っているのかとか、どのような部屋に採用されるのかなどを考えてみました。
下地であるコンクリートに直接塗っていくこと、そして様々な性能を持たせることが可能だということ、その性能から厨房や物流倉庫、機械室などで採用されること。

見た目としてはそれ程高いグレードという訳ではありませんが、そもそも塗床はグレード感を求められる部屋には採用されない床仕上材です。
そう言った意味では、今まで説明してきたビニル床シートやカーペットやフローリングなどと比べると、ちょっと特殊な位置づけだと言えるかも知れません。

見た目よりも性能を重視する床仕上材。
もしそうでなければ、よく採用される色がグリーンにはならないですよね。

デザインを主に考える意匠設計者にしてみれば、塗床というのはきっと「機械室とか厨房の床仕上材」というイメージしかないと思います。
設計図の仕上表に「塗床」と記入しておけば、あとは性能とコスト条件を満たした商品を施工者がある程度選定してくれるという感じです。

そして、色のバリエーションはもうワンパターンというか…
色の選定にはそこまでの選択肢がないので、無難な選択をしようとするとグレーしかない状況になることがほとんどです。
もっと良い感じのダークブラウンとかがあっても良いんですけどね。

こうしたイメージは私の偏見も少し入っているかとは思いますけど、塗床は実際にこのような性質を持っているので、大きく違っていることはないはず。
ただ、見た目重視の床仕上材ではないとは言っても、施工した部屋をまだ酷使していない状態であれば、見た目は全然悪くないです。

グレーの塗床で艶があるタイプとかを選定すれば、ピシっとフラットな状態で仕上がってくれるのでかなり綺麗な見た目になります。
ちょっと小さい写真ですが、グレーの塗床だとこんな感じになります。

グレーの塗床

塗床の色としてグリーンはちょっと「いかにも塗床です」みたいな感じになってしまい、それほど美しいとは言い難い仕上がりになってしまいます。
もちろん見た目よりも性能を重視する部屋に採用するのが塗床ですから、いかにも塗床でも問題はないんですけど、どうせなら見た目も少しは気にしたいところ。

そう言った意味では、グレーであればそんなに悪くないと思いませんか?
さて、今回はそんな塗床についての続きということで、塗床のメリットや納まりについて考えてみることにしましょう。

■塗床のメリット

前回も同じような内容の説明をしているので少しダブりますが、床仕上材として塗床を採用するメリットには以下のような点が挙げられます。

・硬質である

・色々なものに対して耐久性を持たせることが出来る

・継ぎ目のない床仕上になる

・色もそこそこ選べる

塗床を採用する目的は主に下地コンクリートの保護になりますから、なによりも重要なのは耐久性ということになります。
とは言っても、どのような条件で耐久性が必要になるのかは、当然部屋の用途によって全然違うものになることは言うまでもありません。

例えば薬品がこぼれた時でも床仕上材が変質しないように、という目的の部屋で、車の走行に対する耐久性を持たせても効果はありません。
そうした薬品を使う部屋であれば、恐らく車両の走行は全然ないことが想像出来るので、そうした耐久性は意味がないどころかコストの無駄となってしまいます。

もちろんその逆の話も当てはまるので、建物基本計画を検討する役割をもつ設計者であれば、当然そうしたミスマッチがないように計画をしていくことになります。
対象となる部屋にどのような耐久性が求められるのかは、施主の要望によって様々ですから、きちんと施主からヒアリングをする必要があります。

そうして施主のニーズにあったグレードの製品を採用していくことで、ある程度激しい使い方をされる部屋でも、塗床であれば床仕上材として成立することになる訳です。。

■塗床のデメリット

塗床のデメリットとして挙げられるのは、これはもう仕方がない部分ではありますが、以下のような部分になります。

・見た目的には今ひとつ

そこまで見た目が悪い訳ではありませんが、やはりフローリングが持っている木の質感や、カーペットが持っている高級感などを塗床で出すことは出来ません。
ただ、こうしたデメリットは当然のことと言うか、床仕上材として目指している方向性が違うだけの話です。

決して塗床が仕上材として劣っているという訳ではありません。

フォークリフトが毎日走り回るような場所や、厨房など毎日お湯が床にこぼれるような部屋では、見た目よりもまず床仕上材がヘタれないことが重視されます。
そうした部屋にカーペットを選定すると、当然最初は美しく見えるのですが、結局はすぐに見た目も悪くなってしまいます。

そうした状態にならないために塗床を選定する訳ですから、見た目よりも性能を重視しているのは当然のことだと言えるでしょう。
いくら見映えの良い仕上材を選定したとしても、数年後には見る影もないようでは仕上材として失格ですから。

建物が出来上がった直後の見え方だけを考えず、もっと全体的な視点で考えれば、塗床が最も優れたデザインとなる部屋は結構多くなるはずです。