このカテゴリで今まで説明をしてきた中で、まずはLGS壁には色々な性能をもった製品があるということと、それらの一部を紹介するところまで話を進めることが出来ました。

建物の用途がどのようなものなのか、そして建物の構造がRC造なのかS造なのか、それともSRC造なのか、その建物が何階建てで床面積がどの程度あるのか。
こうした条件によって壁に必要な性能は色々と違ってきて、もちろん壁が配置される場所によっても求められる性能は様々です。

耐火性能だけが必要とされる壁もあるし、遮音性能も同時に求められる壁もあるし、部屋と部屋を区切るだけの性能があれば良い場合もあります。
そうした様々なシチュエーションに合わせて、LGS壁には様々な仕様と性能が用意されています。

その場所ごとに適切な仕様のLGS壁を選択していく。
こうした考え方が建物を建てる際には重要になってくる訳ですけど、そうした話と通じる要素としてもう一つ重要なものがあります。

コストを意識することが重要に

建物を建てたいと考える側である施主が、恐らくは最も気にする要素ではないかと思われる「コスト」ですね。
これを意識しない限りビジネスは成り立ちませんから、今回はLGS壁をコストという視点から考えてみることにします。

■仕様を統一するメリットとは

建物がどのような用途なのか、そしてどの程度の規模なのかによって、そして設置される場所によって求められる壁の性能は少しずつ異なってきます。
例えば階段やエレベータな竪穴の周囲はほぼ間違いなく耐火壁が必要になりますし、音楽スタジオがあればその周囲の壁には高い遮音性能が必要になる。

そうした場所によって変わってくる壁の区分を細かく検討していく必要がありますが、検討する条件が様々なので結構大変というか面倒な作業でもあります。

それなら全部同じ性能のLGS壁にした方が楽だし、効率も良くなるのでは?

と思ってしまう場合も、もしかしたらあるかも知れません。
必要な性能を満たすような壁を一種類だけ用意しておいて、LGS壁を採用する場合は必ずその製品を選定するという考え方です。

こうした考え方は確かに楽な気もしますけど、やっぱりそうやって乱暴に一括りにする考え方は少なくとも仕事では出来ません。
これはなぜかと言うと、全部同じにするとコストが嵩んでしまうから、というもの凄く当たり前の話になってきます。

これはもう正論すぎてこれ以上の説明が難しいというか…
当然の話ではありますが、良い建物をつくるために、出来るだけ無駄がないよう検討して調整していくのがプロの役割になります。
プロとしてその役割を放棄する訳にはいきません。

建物にめられる性能を満たしつつ、なおかつコストを意識して満たしすぎないような性能の壁を選定する必要がある、ということです。
「大は小を兼ねる」という安易な考え方をすれば、最もスペックの高い壁を全ての部分に採用することで間違いなく建築基準法を満たした建物になります。

しかしそうした選択をすることによって、当然の結果として余分なお金がかかってしまい、その金額は当然施主が支払うことになる訳です。
そうした事実を知った時に施主が喜ぶかどうかを考えると…恐らくあまり喜ばないのではないかと私は思います。

なぜそんな無駄な事をするのか、と、少なくとも私だったら怒りますし、無駄をなくした計画を要求するでしょう。
そもそもの話として、そんな余裕を見た計画をした場合は見積金額が高くなりすぎてしまい、結果として契約することが出来ないとは思いますが…

■考え抜いた建物の為に

設計段階で想定している壁の仕様を最高スペックに統一することで、得られるメリットというのは「色々細かい部分を考えなくて済む」ことだけ。
表現を変えれば「仕様を統一することによって間違えをなくす」などなど、言い方は色々あるとは思いますが…

間違えないようにする為だけに壁を統一する、というのはあまりにも安易な手段と言わざるを得ないでしょう。
建物を設計する側の仕事は「考え抜いた建物を造ること」であり、間違っても「簡単に考えられる建物を造ること」ではありません。

そうした深い思考をすること自体を放棄して、施主に余分にお金を支払わせるようなやり方はどう考えてもプロの仕事とは言えません。
建築のプロとしてそんなことにならないよう、その場所に適した仕様の壁をしっかりと選定していきたいものです。

もちろん今回出した例はあまりにも極端な話ですから、実際にそんなことをする設計者や施工者はどこにもいないと思います。
それでは相見積もりの金額で勝てるはずはないですから。

ただし、オーバースペック気味にしておいた方が安全ではないか、という考え方は誰しもが持っているものなので、似たような話は結構あるかも知れません。
どちらを選定するか迷った時は、とりあえずスペックが高い方を選んでおけば間違いないかな、という気持ちは誰にでもありますから。

なにが何でもギリギリのスペックを狙っていく必要はないと思いますが…
それでもコストを度外視した建物というのは喜ばれませんので、無駄のない設計を心掛けたいところです。