びしゃん仕上とか割肌仕上とか

石材の表面処理にはたくさんの種類があって、それぞれの処理によって仕上材としての見え方は大きく変わってくることになります。
表面を磨いたり、バーナーで焼いたり、高圧の水や砂などをぶつけたり。

それぞれ床や壁などの部位で適切な見せ方が出来るように、色々な表面の仕上方法がある。
こうして表面をどのように加工するのかによって見え方や質感が変わってくるというのは、やはり自然の素材を使った仕上材ならではのものだと言えるでしょう。

石の表面処理方法について、前回までの説明で「研磨仕上」と「粗面仕上」があるという話をしてきましたが、種類としてはもう少しあります。
具体的に挙げていくと以下の二種類です。

・叩き仕上

・割肌仕上

これらの二種類で石材の表面処理方法については一通り取り上げたことになるので、表面処理についての話は今回で終わりになると思います。


■石の表面処理

●叩き仕上

石材の表面を工具によって叩くことで凹凸を付ける手法を叩き仕上と呼びます。
もうそのまんまの表現ではありますけど、もちろんただ何も考えずに叩くわけではありません。
基本的には職人さんの手作業になることが多く、そこには長年の経験が必要な技術もあって、非常に奥が深い世界があります。

こうしたシンプルな繰り返しの作業は、どちらかと言うと人の手よりも機械の得意分野なので、機械で作業した方が効率的かも知れません。
しかし機械では出せない味があったり、単純に細かすぎる部分で機械には出来ない場所などもあるので、手作業がなくなることはないのではないかと思います。

もちろん人の手がかかれば人件費もかかっていくので、当然仕上材としてのコストも高くなっていくことになってしまいます。
そう言った意味で機械で仕上げた方が良いということもあるとは思いますが、そのあたりは見た目とコストのバランスが重要で…

と、ちょっと叩き仕上と関係のない話になってしまいましたが、叩いて凸凹を付けて、それが美しく見えるというのはやはり石ならではだと思います。
あとはどのような工具で叩いたり削ったりするのか。
これで石表面の見え方が決まってくるので、以下でその工具などについて説明をしてみます。


・びしゃん

「びしゃん」と呼ばれる工具で石材の表面を叩いて表面を仕上げていくやり方で、独特の凹凸がある美しい仕上方法です。
びしゃんという工具の名称はあまり聞き慣れていないと思います。

これは肉を叩いて柔らかくする調理器具と似たような形をしている、と言えば少しはイメージ出来るのではないでしょうか。
びしゃんはこんな感じの調理器具に似ています。

肉たたきに近い形状

もしくはこんな形状とか…なにやら攻撃的なフォルムですよね。

こんな感じか?

2つめの画像は冗談ですけど、びしゃんの先端形状はまさにこんな感じで、たくさん用意されている尖った先端で石の表面を叩いていく訳です。
かなり根気が必要な作業で、実際に作業している光景を見ると、正直私には出来そうもないという気持ちになってきます。

ただ、機械によるびしゃん仕上も可能なので、そこまで見た目が大きく違わないのであれば、機械を選択することになるのはごく自然なことなのかも知れません。


・のみ切り

石材の表面をのみで叩くことによって凹凸を付ける手法で、のみの大きさによって石材表面の見え方は微妙に変わってきます。
ただ、紹介しておいてこう書くのも変ですけど、正直言ってそれほど採用されることが多くない表面仕上でもあります。


・小叩き

先の細い工具を使って、一方向に細かい線が入るように叩いて仕上げていく手法です。
これを手作業でやるのは非常に大変そうですが、大変なだけあって、最終的な石材の表面はかなり良い感じの見た目に仕上がってくれます。


●割肌仕上 

石材の割肌仕上というのは、読んだままのイメージ通り、石材を割ったそのままのテクスチャを見せる手法になります。
磨いたり削ったりしていない仕上になるので、自然の石が持っている荒々しい感じを見せることが出来ます。

こうした「仕上材を割って見せる」というのは、もう本当に自然素材でなければ出来ないことなので、石独自の仕上方法だと言えます。
ただ、石種によっては簡単に割れてくれないというか綺麗に割れてくれない種類もあるので、割肌仕上が難しい場合もあります。

石材を割ったままの仕上になるのでこれは当然のことですが、壁仕上材として使う場合、隣に張る石と表面を揃えて仕上げていくことは出来ません。
せっかくの割り肌仕上なのに、表面が綺麗に揃うように割っていくとか…
それでは割肌の意味がないですよね。

石材を割ったままの状態では表面の凹凸が大きいため、人が使うことを考えると床仕上材としては全然向いていない表面処理方法と言えます。
単純に床仕上材として割肌仕上を採用した場合、凸凹が大きすぎて歩きにくいし転倒の危険があるという問題もあって、普通は絶対に選択しないはずです。

外部の通路とかであえて狙ってやる場合もあるかもしれないけど…見た目のインパクトよりも利用者の安全性を重視するのが普通なので、私だったら絶対に選びません。
しかし壁仕上材として選定すると、かなり印象に残る壁面になります。

石材を薄くスライスするよりも材料が多く必要になるため、コストとしては割高になってしまいますが、それでも使ってみたくなる表面処理ではないかと思います。

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