コンクリート壁下地に対してUL工法で石膏ボードを張っていく場合、施工の基本的な流れがどのようになっているのか。
というあたりの話について、前回は簡単にではありますが説明をしてみました。
実際にどんな感じで施工されるのかがイメージ出来ていると、納まりの図面を描く際にその知識が役立ってくれます。
具体的には作図している際に手が止まりにくくなって、結果として作図完了までの時間が短くなるというメリットがあると思います。
建築の図面はその種類にもよりますが、建物がどのようになっているのかを詳しく説明することが目的になっています。
しかしその図面を描いている人が、その施工方法を知らないし、実際に自分で施工をしたことがない、というパターンは結構多いです。
逆に、建物を実際に施工する仕事をしている方は、CADを使って図面を描くことをしない場合がほとんどです。
仕事をするために必要な時間を考えると、役割分担して進めていくしかないので、これは仕方がないことではありますけど…
こうして役割分担を進めていった結果として、図面を描く側は自分が施工したことがない部分について作図をしていくということに。
そして施工する側は、実際にやったことがない方が作図した図面を見て施工を進めていくことになる、という状況があります。
今回紹介しているUL工法について、工事の流れとか概要を説明している私自身も、実際にULスタッドを建てた経験がありません。
でもそうして作図された図面が最終的には施工者に渡って、現場ではその方針で施工が進められることになります。
もちろんこのやり方で建物が出来上がっているので、そこはあまり問題にはなりません。
私が実際にULスタッドの施工をやるようになったとしたら、今度は図面をまとめるための時間が全然取れなくなってしまいます。
ULスタッドを施工している方が図面を描くようになったら、当然スタッドを建てるための時間が取れなくなってしまうので、結局は同じような状態になる訳です。
設計者でも施工者でも、図面に関わる方が実際の施工をやったことがなくても問題はない、ということなんですけど…
そうは言っても、どういった流れで工事が進むのかとか、どうやって施工をするのかという知識は持っておいた方が有利です。
実際にULスタッドを建て込む際に、どのようなことに気をつけて施工をすれば良いのか、そしてどこに危険があるのか。
そうした、もっと現場よりの実務的な知識や経験が必要になる作業もあるとは思いますが、図面だけであればそこまでの知識は必要ありません。
図面と納まりを考える場合には、それぞれの工法が持つ特徴と、納まりの図面が頭に入っていればそれで充分なんです。
ということで今回は、コンクリート下地にUL工法を採用した場合、どのような納まりになるのかを具体的に紹介していきたいと思います。
■UL工法の基本納まり図
まずはUL工法の一般的な納まり図を紹介してみると、下図のような納まりになっています。
ULスタッドとコンクリート壁の間に隙間が開いていますが、その隙間にスポンジを入れて、スポンジとの間にボンドを注入していく訳です。
この隙間を調整することで、コンクリート面から石膏ボード面までの寸法を調整することが可能になっています。
カタログによると、コンクリート面からULスタッドの面までの寸法は、13mm~30mmという数値になっています。
ULスタッドの上に石膏ボード12.5mmを張る場合には、コンクリート面から石膏ボード面までが25.5mm~32.5mmということに。
上図で30mmに設定したのは、まずまず中間くらいの寸法が良いかなと考えたことと、あまりギリギリを狙うのは難しいかなと考えたからです。
GL工法の時にも同じようなことを書きましたが、コンクリート壁面が平滑に打設されている可能性は残念ながら結構低めです。
だからこそ、施工誤差があっても困らないように、少し大きめに逃げておくという配慮が必要になってくる訳です。
実際には30mmでもダメな場合はありますけど、コンクリートを施工する際の凸凹を、その上の下地で吸収していく訳ですね。
これは施工精度という面で非常に重要な考え方なんです。
■石膏ボード2枚張りの場合
UL工法の下地に石膏ボードを2枚張る場合でも、考え方は基本的に全く同じで、下地の位置は13mm~30mmです。
そうなると当然、石膏ボードの仕上面は室内側にもう少し出てくることになって、下図のような納まりとなります。
微妙にスポンジ部分の寸法を変えているのは、石膏ボードの面までの寸法が丁度良い数字になるよう丸めているからです。
別にコンクリート面から石膏ボード面まで39.5でも構わないんですけど、図面として押える寸法は出来るだけ丸めた方がシンプルで楽なんです。
小数点があってもなくても、寸法が決まっていれば、それに合わせた位置にULスタッドを建て込むだけ。
0.5mm単位の精度で下地を組むこと自体が難しいですから、それなら分かりやすい数値の方が良いのではないか、という考え方です。
ここの寸法を40にした場合、別の部分で小数点が入ってくる可能性は高いですけど、それはもう仕方がないことです。