床仕上材として石を採用する場合はどのような表面処理が良いのか、という話について個人的な好みも少しありつつ、一般的な話を前回は取り上げてみました。
結局色々な表面処理がありましたが、床仕上材で採用出来る最も無難なものはジェット&ポリッシュではないか、という話でした。

石を床に張る場合には、安全を重視して表面仕上として本磨きを使わない。
これは個人的には割と一般的な話ではないかと思いますが、あくまでも私の個人的な考えというかポリシーでしかありません。

なので、好みによっては本磨きの石を床仕上材として採用する方もいるはずで、当サイトではそれが悪いことだと言っている訳ではありません。
そこは考え方の違いがあるだけで、それを私がここで一方的に批判してもあまり意味がないですし、効果も全然ないですよね。

ちょっと誤解のないようにここで書かせて頂きました。

床石の表面処理方法として本磨きを採用するのが絶対ダメとか、選ぶ人は検討が足りないとか、そういう決め付けで書いている訳ではありません。
ただ非常にシンプルな話として、本磨きは美しい仕上ではあるものの、表面が平滑になっている分だけ滑りやすいから、私はあまり使わないという話です。

ちょっと床の納まりとは関係のない話になっていて、長々と書いてもあまり参考にはなりにくいのでこのあたりで話を変えて…
今回は床石の大きさや目地の納まり、つまり石の割付について考えてみる事にしましょう。

■原石があるという違い

石とタイルは似たような納まりの仕上材ではありますが、もちろん厚みやグレードなど違っている部分は結構あります。
そんな違いのひとつとして、仕上材の大きさがこちらで決められるという点が挙げられます。

タイルの場合は100角タイルだと実際のサイズは96mm角で目地が4mmとか、300角だと295mmで目地が5mmなど、製品毎に規格寸法が決まっています。
目地の芯で寸法を測ると丁度良いサイズになるような大きさで造られることが多い、という話は以前タイルを取り上げた時に説明したかと思います。

あらかじめ工場で製品を製作しておき、それを販売する。
そうした流通や販売の流れを考えると、製品毎に決められた規格寸法があるというのはごく普通のことですよね。
これがタイルの場合です。

もちろん石もタイルと同じように、規格寸法で切り出して在庫を用意しておく、という手法で販売されている商品は結構あります。
しかし石の場合はそうしたやり方以外に、切り出した原石をスライスして自由な大きさに加工していく、というやり方もあるんです。

原石の加工風景

このあたりがタイルと大きく違っている部分です。
なぜこの違いを取り上げたかというと、石のサイズは設計者の考えである程度までは自由に決めることが出来る、という特徴があるからです。

もちろん原石のサイズを超えることは出来ませんが、ある程度のサイズで床の模様などを自由に計画出来るというのは大きなメリットではないかと思います。
ただ、厚さに対してサイズが大きすぎると石は割れやすいですから、運搬や施工を考えるとそこまで大きなサイズには出来ません。

とは言っても、こうした石の特徴は、床のデザインや納まりを検討する際の結構大きなポイントとなってくるはずです。
床の割付がある程度思った通りになるというのは、意匠としては非常に良いことで、そこがタイルと大きく違っている部分ではないかと思います。

■図面が必要になる

石は原石をスライスして計画している大きさに加工していく、という手順で製作することが出来て割付がある程度自由になる。
これは見た目を重視する設計者にとって確かに良いことです。

しかしその代わりという訳でもないですけど、具体的にどのような大きさで加工をするのかを決める為に図面が必要になってきます。
規格品として皆同じ大きさになっていて、端部は現場でカットして納めるという考え方のタイルとはそこも大きく違っているんです。

どの程度の大きさの石をどのように配置していくか、皆同じ石種を採用するのか、アクセントとして別の石を採用するのか、端部はどう見せるのかなどなど。
石の納まりと割付を計画するためにかなりの細かさで図面を書いて、その割付をじっくりと検討して、それからはじめて石を加工することが出来るんです。

逆に言うと、そうした検討図面がまとまらない限り、石は加工できないので当然現場に搬入も出来ずに施工が出来ないという事になります。
まあこれは設計ではなくて施工側の問題ではありますが…

タイルは採用する品番と数量が分かればそれでOKなんですけど、石は単純に石種を決めただけで終わらず、あまり簡単にはいかないということですね。

ただ、そうして細かい検討をしながら図面を描いて、その図面を元にして加工をしていくおかげで、製品としてはかなり高い精度で出来上がります。
これも石の大きな特徴です。

タイルとは違って自由に割付が出来るということは、設計者がしっかりと割付にポリシーを持つ必要があるということ。
ポリシーを持って設計が出来るのが石という床仕上材である、と言った方が良いかも知れません。

石の目地は高い製作精度のお陰で細めに設定することが出来て、タイルの目地以上に目立たない存在ではありますが…
それでは石の目地をどこに合わせるのかなど、考えておくべき項目は結構あるものです。

時折細い石を混ぜて床を割付ていくことも出来るし、かなり自由度の高い床仕上材ですから、やりがいのある仕上材だとも言えます。