建物を構成する壁、そしてその壁を構成する材料による違いについて前回は考えてみました。
鉄筋コンクリートで出来ているRC壁の特徴について話をしている中で、なぜか途中から自分の経験談に変わって話が進んでしまいましたが…
RC壁が持っている特徴やメリットなどについては掴めたのではないかと思います。
RC壁は建物を構成する壁としては申し分ない性能を持っているので、採用する機会もかなり多くなってくるのではないかと思います。
建物の構造にはフレームがどのような材料で出来ているかによっていくつかの種類があり、その中のひとつに鉄筋コンクリート造(RC造)があります。
RC造では柱と梁と床という建物の構造体を鉄筋コンクリートでつくっていくことになりますが、その場合外壁はほぼ間違いなくRC壁で構成されることになると思います。
そう考えると、RC壁を取り扱う頻度は結構高めになるかも知れません。
RC壁はどうしても重くなるし、中に鉄筋を入れる必要があるため壁厚が大きくなりがちという特徴を持っています。
そのため、RC壁を多用すると建物が重くなってしまうことになり、さらに壁が分厚いので部屋の有効面積が少なくなってしまいます。
そのあたりの特徴を考えていくと、建物全部の壁をRC壁にするというのは、重量的・スペース的・コスト的に避けた方が良いということに。
もちろん出来なくはないですけど、その建物は間違いなく使い勝手が良くないので、RC壁はその性能が求められる部分にだけ採用する、というバランス感覚が重要になってきます。
さて、RC壁についての話はこのくらいにしておき、引き続き違う壁の仕様についての説明を進めていくことにしましょう。
RC壁の次ということで、今回取り上げるのはALC壁です。
RC壁がRC造の建物で多く採用される壁種であることに対して、ALC壁はS造の建物で多く採用される壁です。
そんなALC壁の特徴を今回は取り上げてみることにしましょう。
■ALC壁
今回紹介するのはALC壁で、想像出来るのは「ALCで構成されている壁」ということではないかと思います。
だけどその前段階の話として、そもそもALCというのは何? という問題があります。
これはRC壁について説明をした際には全く取り上げなかった話ですが、今回はそうしたそもそもの話から入っていくことにします。
ALCというのは、長い名称で呼びにくいし覚えにくいので、それぞれの頭文字を取って簡略化された呼び方なんです。
これは結構よくある名前の付け方ではないかと思います。
どんな名称の頭文字を取っているのかというと、以下の言葉になります。
AUTOCLAVED(オートクレーブ養生)
LIGHTWEIGHT(軽量)
CONCRETE(コンクリート)
これらの頭文字を取って「ALC壁」という表現になっていています。
ちょっとよく分からない言葉が入っているかも知れませんが、何となくイメージは伝わるのではないかと思います。
つまり「オートクレーブ養生された軽量コンクリート」ですから、オートクレーブの意味はさておき、コンクリートの壁ということなります。
ただRC壁と決定的に違うのは、ALCが工場で製作される製品だということ。
コンクリートは現場に生コンを運んで型枠に流し込み、硬化するまで待つという手順でつくっていくことになります。
しかしALCは工場で既に出来上がっているものを現場に運ぶんです。
この違いはかなり大きいです。
ALCの外見はこんな感じの製品になっています。
ちなみにオートクレーブ養生というのは何かというと、内部の圧力を高めた装置の中で養生することを意味しています。
圧力が高い場所で養生されるとどんな効果があるのか…と、考えていくとキリがないので、そのあたりの話は深く掘り下げないことにします。。
ALC壁というとあまりピンと来ないかも知れませんが、「ヘーベルハウス」という言葉は時々CMをやっているので知っていると思います。
「ヘーベル」は旭化成建材が販売しているALCの商品名で、要するにヘーベルハウスはALCを用いた一戸建てということになるんです。
そんなALC壁の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
・コンクリートに比べると軽い
・規格品を工場で制作出来る(から工事が早い)
・比較的加工しやすい
・内部に気泡が多く含まれる為、断熱性能が高い
・耐火性能もある
・デザイン性を重視した製品もある
・とは言っても、高い意匠性とは言い難い
と、こんな感じですね。
3階建くらいのマンションで、あまりデザインに凝っていない建物を見ると、かなりの確率で外壁はALCになっている気がします。
これは別にALCを悪く言っている訳では全然ないです。
多く採用されるということはつまり、それくらい手軽で性能も高く、コスト的にも有利な材料だということなのでしょう。
こうして外壁に多く用いられるALC壁ですが、もちろん内壁にも採用されることは多いです。
ALC壁には耐火性能があるということで、防火区画壁として用いられることも多く、エレベータの周囲などでもよく使われます。
納まりはそれ程難しいものではありませんが、取り付ける為の下地が必要で、そのあたりは個別に詳しく説明をしていきます。