前回は床仕上材のひとつであるカーペットについての話を取り上げて、まずは毛足の処理によって幾つかの種類があるということを簡単に説明しました。
あまり大きな違いがなさそうに見えますが、やはり床仕上材としての見た目は結構違ってくるので、出来れば実際の製品に触れてみると良いです。
カットパイルとループパイルの違いは、具体的に採用する製品をこれから選定する、という時に考慮しておけば良い部分だと思います。
それぞれの特徴を知っておき、部屋の用途に合わせて適切な製品を選定していく、ということが知識を持っていると出来るようになる訳です。
どこかの建物を利用する際に、既に敷いていあるカーペットを見て「お、これにカットパイルを採用しているのか」とか言うようなものではありません。
そんな事を考えるのは建築のプロだけで、それを人に言っても恐らく「なにこの人面倒くさい」と思われるだけに終わると思います。
少なくとも建築のプロではない限り、こうしたカーペットの分類に注目する人はそれほど多くはないですよね。
せいぜい「この床はフワフワで良い感じだよな…」とか思う程度で、そう感じたとしてもそれを誰かに言う機会もそれ程多くはないと思います。
ただ、先程も少し書きましたが、仕事で床仕上材を選定する立場にいる場合は別です。
それぞれが良い所を持っているので、仕上材を選定する際にはそれぞれの特徴を考慮した上で決定していくことが求められます。
これはプロとして仕事をする訳ですから当たり前の話ですよね。
例えばの話ですが、外部に面する部屋の床仕上材としてカーペットを採用してしまうと、濡れたり汚れたりしている靴によってすぐに汚れてしまいます。
しかもカーペットの毛足が長くて汚れがなかなか落ちにくいという問題もある。
そうしたミスマッチが発生してしまわないためにも、仕上材を選定する立場にある方には豊富な知識が求められることになります。
どのような仕事に関わっているのかによって必要な知識の種類やレベルが違ってくる、という話は当然のことですよね。
だからこそ当サイトでは、多岐に渡る知識を得て欲しいという思いがあって、細かい話にも触れていくことにしています。
今回はそのあたりの仕上材選定の話と、カーペットの素材についての話を考えてみたいと思います。
■床仕上材の選定
先ほども少し触れたように、一般的な利用者として建物を訪れる際には、床仕上材の分類やグレードなどを意識する機会はそれほど多くありません。
そこまで考えながら建物を利用すると、本来の目的を見失ってしまうことになるので、当然そんなことはしなくても大丈夫なんです。
私の場合は仕事柄、どうしてもそのあたりをついつい考えてしまいますが…
それでも考えたことは自分の中だけにしまっておいて、それを一緒にいる人に言ったりはしません。
言ってもあまり良いことはないですから。
前回紹介したカーペットの毛足にゆおる分類には、大きく分けてカットパイルとループパイルという区分がありました。
見た目のグレード感をやっぱり重視してカットパイルにするとか、人の通行が多い部屋なので耐久性を重視してループパイルにするとか。
そういった特徴を意識しながら床仕上材を選定していく訳ですけど、建物を利用する側としては、そこまで見ていない方がほとんどではないか、という話は先ほども書いた通りです。
だけど、それでも設計者は建物全体について考えながら、ベストだと思われる床仕上材を選定していくことになります。
先程は耐久性を考慮してループパイルのカーペットを選定した部屋でも、もしかしたら人がよく通る場所だから石の方が良いのかも知れないとか。
そうした選択肢は本当にたくさんのパターンがありますが、これはカーペットの話から離れてしまうので、ほどほどにしておきましょう。
また、このあたりの話はコスト抜きに考えることは出来ないので、全体的なコストを意識しながらそれぞれの仕上材を選定していくことになります。
これは建物全体のグレードや、どのような方が利用する部屋なのかなど、様々な条件によって変わってくるものなので、ここで一概に言うことは難しいところです。
ただ、少なくとも建物が竣工したあとで「ここがなんでカーペットになっているの?」みたいな話にならないようにしたいところです。
■カーペットの素材
カーペットの分類によって採用する部屋が変わってくるという話にプラスして、カーペット自体がどんな素材で出来ているかによって、また少しずつ特性が違ってきます。
素材の話になってしまうとかなり奥が深くなってしまうので、ここでは非常に簡単に書いてしまいますが、大体はこんな感じになると思います。
・ウール
柔らかくて温かい自然素材。液体がシミにくい。
・アクリル
ウールに近い化学繊維。帯電しにくい。
・ナイロン
耐久性に優れる化学繊維。遊び毛が出にくく清潔。
・ポリプロピレン
軽くて上部な化学繊維。汚れが付きにくい。
ただ、こうした素材による特徴の違いというのは、特に気にしなくても、用意されている商品のグレードによって自然と選べるようになっています。
耐久性に優れたカーペットを選ぶと、それは当然のようにナイロン製になっているとか。
そのあたりは床材のメーカーが用途によってラインナップをしっかりと用意しているので、素材毎の特徴をここで暗記しておくことまでは必要ないかも知れません。