目地調整という選択肢も

前回はタイル割付をする際の考え方として、半端なサイズをOKとするかどうか、という話をしました。
自分の家だとしたらどうするか、という話も例えばの話で取り上げてみました。

こうした現実的な視点で考えてみると、自分だったらどうするかという基本方針というか考えが出てくるものです。
実際に建物は非常に身近なものですから「自宅だとしたらどうするか?」という考え方は結構有効な場合が多いです。

もちろんコストや建物の規模が違いすぎる場合もあるので、あまり役に立たない場面もありますけど…
それでも時々考えてみると良いかも知れません。

前回の例でも話が出ましたが、300角とか200角など大きめの床タイルは、余程運が良いか、もしくはしっかり計画しない限りは壁際で半端サイズが入ってしまいます。
プロが仕事をする訳ですから運任せはちょっとあり得なくて、運任せにならない為にあらかじめ図面が必要になってきます。

実際にタイルを貼るよりもかなり前に、まずは図面の中で検討と調整をやっておき、タイルを綺麗に納めるのが理想的だと言えます。
ただ、そうしてタイルをきれいに並べる為には、壁位置をタイルに合わせるなど色々と調整しなければならない部分が多くなってきます。

タイルの為にそこまでするべきか、というのが前回の主なテーマでした。
例えば2cm巾のタイルが入るとか、そういう極端な状態にならない限り、それほど納まってない感は出ないものです。

そうであれば、200角タイルが端部で150mmになっても良いんじゃないか。
少なくとも私は床タイルについてそんな感覚を持っています。
別に面倒くさいとかそういう話じゃなく、もっと優先させることがある、というのがその大きな理由です。

けれど設計者の考え方はそれぞれですから、タイルはきちんと割れていないとダメ、という人もいるはずです。
そうなった場合には、もう壁の位置を調整するなどして、キッチリと図面をまとめていく必要があります。

これはどちらが良いとか悪いとかいう話ではなく、これは設計者のポリシーの問題ですから、場合によってはそういう調整も必要になるかも知れません。
ただ、決まったサイズのタイルであっても、割付を調整してきちんと納めることが出来る場合もあります。

タイルによってはあまり出来ない場合もあるんですけど、今回はそのあたりの話を取り上げてみたいと思います。


■目地で調整という考え方

壁位置を調整しなくてもタイルをきちんと割ることが出来る方法とは、簡単に言ってしまえば「目地調整」です。
タイルのサイズは決まっていますが、目地というのは「隙間」ですから、隙間の寸法まで厳密に決まっている訳ではありません。

割付図を描いた時に、微妙に小さなサイズのタイルが入った場合には、少しずつ目地を大きくして納めるというやり方があります。
逆のパターンもあって、あと少しで295mmのタイルがそのまま貼れる、という場合に目地を少しずつ小さくして納めることも出来ます。

これを「目地調整」と呼びます。

もちろん目地の巾には機能的な限度と意匠的な限度があるので、極端に狭い目地とか広すぎる目地は出来ません。
それでも目地の数は結構多いですから、例えば0.5mm目地巾を変えただけでも、結構調整が出来るものなんです。

どうしても床タイルをきちんと割り付けしないとダメ、という場合も時にはあると思います。
そんな場合には、壁位置の移動よりも前に、目地巾で調整出来ないかを検討してみるのが良いと思います。


■ネット貼りは楽だけど

ただし、タイルの種類によっては目地調整があまり出来ない場合もあるので、そこは注意が必要です。
なぜ目地調整が出来ないのかというと、以下の写真を見て頂ければなんとなく分かってくると思います。

100角ネット貼りのタイル

100角タイルに多いパターンなんですけど、小さいタイルを1枚づつ貼るのは大変なので、9枚で1セットにしているんです。
これはネット貼りと言われる手法で、この方が貼る手間はかなり楽になるため、こういう商品は結構あります。

300角タイルを9枚セットにしてしまうと、1セットで1m近くになるので非常に不便で困るけど、100角ならかなり施工が楽になるんですよね。
これは実際に施工する側からすればかなりの違いだと思います。

ただし、こうしたネット貼りだと目地巾が最初から決まっているので、通常5mmの目地巾を6mmにして、みたいなことが出来ません。
もちろんバラバラに貼ってもらえれば目地調整は可能なんですけど、一気に9枚貼れるところを1枚づつ貼ってくださいとはなかなか言い難いものがあります。

3枚毎に目地調整とかも考えられますけど、意匠的に変な状態になるのは間違いないのでお勧めできません。

なので、全部の面を目地調整でタイル割りしていくのは結局現実的ではないんですよね。
このあたりは少し注意してタイルの割付を計画していく必要があります。

関連記事

  1. 床タイルの一般的納まり

    床-タイル

    コンクリートスラブのレベル検討

    床タイルの納まりを検討する際に、下地との関係などについて考えておくべき…

  2. タイルのイメージ

    床-タイル

    タイルの大きな分類と実用性

    今回のカテゴリで取り上げようと考えている床仕上材は「タイル」です。前回…

  3. タイルのカタログ表示例

    床-タイル

    床タイルの特徴を考える

    前回はタイルという床仕上材がどのような材質で構成されているのか、そして…

  4. 雨掛かり部の床仕上材として

    床-タイル

    タイル調整をする場合と水勾配

    床タイルの割付を検討している中で「あと少しできれいに割り切れる」という…

  5. タイル目地はそこまで気にならない

    床-タイル

    床タイル割付と壁位置の関係

    床タイルを出来るだけきれいに配置することを考えて、図面上でタイルを配置…

  6. エントランスホールのタイル例

    床-タイル

    床タイル納まりのポイント

    床仕上材としてタイルがどのような特徴を持っているのか、そして実際にどの…

スポンサードリンク




おすすめ記事

  1. コストが大きな問題
  2. ステンレスグレーチング
  3. 廻り縁のイメージ
  4. 部屋のグレードによる仕上の違い
  5. 設計図のイメージ
  6. 木下地の一例
  7. 普通の床仕上材が最もニーズがある
  8. 床コンクリートレベルを下げておく
  9. 施工段階で出来ることは限られてくる
  10. 断熱材のイメージ
  1. 廻り縁のイメージ

    納まりの区分け

    廻り縁納まりの概要について
  2. 防滑性能が重要

    床-石

    意匠よりも大事な事もある
  3. ボード目地のイメージ

    壁-RC+石膏ボード

    コンクリート壁と縁を切るという概念
  4. 原石の加工風景

    床-石

    床石のサイズと割付と
  5. 遮音性能が必要な部屋の例

    壁-LGS+石膏ボード

    遮音性能が必要な部屋とは
PAGE TOP