床仕上材だけではなく壁仕上材の場合も同様に、タイルというのは実際のタイルサイズと目地の巾という考え方があります。
それを意識しないでタイルの色や模様だけを考えてしまうと、後で寸法的な部分で苦労をすることになる可能性が高い。

そんな話を、私の失敗談とあわせて前回は紹介しました。

建物を造っていく際には、色々な製品を工場で製作してきてそれを現場で取り付けていくことで、少しずつ建物が出来上がっていきます。
工場で製作してくるということはつまり、現場で大きさを変えたくなったとしても、それが難しいということを意味しています。

現場では取り付けるだけ、という流れがあるからこそ、施工の時間を短縮することが出来る訳です。
だから事前に色々な取合がうまくいくように調整して、その大きさで工場では製品を製作していくことになります。

製品の大きさには何かしらの制限というか「よりどころ」がある場合と、ある程度自由に大きさを決めることが出来る場合があります。
タイルに絡む製品は前者になる場合がほとんどで、タイルの並びに合わせて製品のサイズを決めていくことになります。

つまり、タイルを施工する部分がある場合は、事前にタイルの配置を計画しておく必要がある、ということです。
これを「タイル割り」と呼び、これは主に施工者が図面を描いて検討をしていく部分になります。

こうしたタイル割りの検討が必要になってくるからこそ、タイルのサイズが目地を含んでいるかどうかが重要になってくるんです。
そして前回も書いたように、そのサイズを間違えると、そのタイル割りを想定して製作してきたものがうまく合わないという寂しい状態になってしまいます。

今回はそのあたりの「タイル割り」について、簡単にではありますが例を挙げて説明をしてみたいと思います。

■サイズによる目地位置の検討

タイルには製品ごとに決まったサイズと厚さがあります。
そしてタイルのサイズに合わせて目地の巾もある程度は決まっています。
施工方法によって微妙な違いはありますが、まずはコンクリートスラブのレベルを検討するために、タイルの厚みがどの程度なのかを確認していきます。

タイルの厚み+施工に必要な貼付代+施工誤差のための逃げ寸法

これがタイル天端からコンクリート天端までの必要寸法になるので、それぞれの要素を検討しながら下地の位置を決めていくことになります。

次に平面的な話に進んでいき、決められた大きさのタイルをどのような配置にしていくのか、という検討していくことになります。
タイルの目地は色にもよりますが結構目立ちますから、変な位置に目地が入ってしまう状態は出来るだけ避けたいところ。

なので、極端な表現をすると、壁と壁の間でタイルが全部同じ大きさに見えるように貼ってある状態が、タイルとしては理想ということになります。
そこまで厳密にやるのは難しいし、頑張った挙句にタイルの製品が変わってしまう可能性もあるので、ちょっとリスクが高めではありますが…

少なくとも、壁際に小さなタイルが入る形にならない、変な位置に目地が入らない、というような計画をしていく必要はあります。
そうした納まりのポイントがあるので、タイルのサイズと目地の巾が具体的にいくつなのかを細く気にしていたんです。

■タイル割付図のサンプル

もう少し具体的な例を出すと、例えば下図のような風除室があったとして、その床仕上材として300角タイルを選定したとします。

風除室の平面図

そうすると、風除室の中でどのようにタイルを配置すれば綺麗に見えるのか、タイル割付図で検討していく事になります。
こうした検討は設計側がするのではなく、施工側が検討して図面化する領域の仕事になりますが、実際にやってみるとこんな感じになります。

タイル割付図の一例

操作的な話をすると、CADで作図をする場合には、実際のタイルをそのまま書き込んでいった方が分かりやすいです。
ただしこの描き方をしてしまうと、変更になって修正が必要になった時に結構面倒になるという欠点があります。

そうした修正までを考えると、目地の中心位置を1本の線で表現した図面の方がシンプルになって見やすいので、場合によっては単線で表現した方が良いかも知れません。
ただし単線でタイルを表現した場合には、特に壁際などで実際のタイルがどんな大きさになるのかが分かりにくい状態になってしまいます。

どちらの表現方法も一長一短があるんですよね。
なので、自分の好みで作図しても良いんじゃないかと私は思っています。
私としては、検討段階ではハッチングなどでタイルを簡易的に表現しておき、方針が決まった段階でしっかり表現していくのが好みです。

この「好み」ってやつも時間の経過で変わったりするので、ここで「正解はコレです」みたいなことを書くのは難しいですが…

ちなみに上図ではタイルの大きさをそのまま記入しているので、目地がダブルラインで表現されて、結構太く見えています。
個人的にはこっちの方がしっくりくる感じですが、どちらの表現でも相手には意図が伝わるので大丈夫じゃないかと思います。