床タイルを出来るだけきれいに配置することを考えて、図面上でタイルを配置してみるというタイル割付図の考え方を前回は紹介しました。
下図のようなサンプル図面を作図してみて、具体的にどのように調整していくのかという例を出してみました。
X方向は壁の中心を基準として、Y方向は出入り口の中心を基準として、出来るだけ小さいタイルが入らないように調整をした訳ですが…
これはあくまでも例として簡単に割付をしただけですから、このサンプル図面のタイル割はそこまで深く検討されているとは言えません。
ただ、今回の例と同じような割付方針でタイルを貼ってるな、と思うような場所は実際によく見かけます。
私としてはこれで全然OKだと思うし、この風除室を通る人の99%はタイルの目地位置を気にすることはないと思います。
前回「目地は目立つ」と書きましたが、目立つとは言っても、気にする人(つまり建築関連の仕事に就いている方)には目立つという話なんです。
だけど「誰も気にしないから良いです」が通ってしまうと、デザインも何もなくなってしまうので、そこはしっかり計画したいところです。
今回はそんな割付について、細かい調整をするのかも含めて、もう少しだけ考えてみることにしましょう。
■壁位置を調整する?
床タイルの割付をサンプル図面として例に出した訳ですが、本当はキッチリ割れている図面にした方が良かったんです。
現実にはない建物なので色々な寸法が自由自在になるため、タイルだけはきれいに割れています、という図面も簡単に出来ます。
しかし実際には床タイルが綺麗に割り切れている場所なんてそれほど多くないので、現実に近い図面を例に出してみました。
あまり一般の方は床タイルの割付を気にしないので、そこまで厳密に、壁位置を変えてまでして床タイルを割っていく必要はない。
個人的にはそう思っています。
しかしこうした感覚は人によって違うので、私がこれでOKだと思っても、そう思わない人もいるというのが難しいところ。
もちろん私だってタイルがきれいに割り切れている状態とそうでない状態を比較すれば、割り切れている方が良いと思います
それは当然のことなので分かっています。
ただ、タイルの納まりだけの為に壁位置を変えるのかを考えると、そこまではやらなくて良いだろうと思うだけの話です。
先ほどの例で言えば、こんな感じに壁を移動して、タイルが綺麗に配置されるように調整する、ということ。
Y方向のタイル割はこれで完璧になりましたけど、少なくとも風除室もその隣の部屋も確実に狭くなってしまいました。
これは非常に安易なやり方でタイルを調整しているので、実際にはもう少しやりようはあるとは思いますけど…
床タイル割付の為にそこまでするかかどうか、という話は結構大事な問題になるので、検討する前にそこを意識しておくことは重要だと思います。
■もし自宅だったら
タイル割りの調整について考える際に、自分の場合に当てはめてみるとどんな感じになるのかをここで考えてみましょう。
これは例えばの話ですが、もし私が自宅を新しく建てることになって、当然という感じで設計を自分でやったとします。
そして玄関の床仕上材としてタイルを選定したとします。
恐らく、出来るだけ安価でなおかつ出来るだけ高級感のあるタイルはないかな…と悩んでタイルの品番を決めることになるでしょう。
ただ、自分でプランを考える訳ですから、当然色々と使い勝手などを考えて壁の位置を調整していくことになります。
そうなると、タイル割の優先順位は結構低めで、壁位置優先にして壁際にはタイルを切って納めるような調整をすることになると思います。
自宅の面積は限られていて、全部を優先することなんて出来ないので、こうした判断はもう仕方がないことです。
少なくとも私はそう考えて設計をするでしょう。
しかしそれが施工段階になって、施工者から「タイルのサイズにあわせて10cm壁を動かしましたよ」と言われたらどう感じるか。
それは恐らく「ちょっと待って」になると思います。
実際にそうしたシーンになってみないと分からないことですけど、ほぼ間違いなく壁位置を元に戻させると思うんです。
なんのために壁の位置を微調整したのか、という話ですよね。
もちろんこれは自宅の敷地が狭い場合の話なので、建物のスケールによって反応は違ってくるとは思いますが…
少なくとも自分の家でそれをやられたら、床タイル割りなんて全然気にしないから壁位置を優先してほしい、と言うでしょう。
床タイルに半端が入っていない状態を作ることは、確かに意匠的に考えると良いことだとは思います。
しかし壁を動かしてまでタイルに合わせる必要があるかどうか、と聞かれると、私はそこが絶対的な指針ではないと答えます。
それよりも重要な要素は他にあって、タイルの見た目はそこまで重要なことではないと私は考えています。
だからこの場合はタイル割付が完璧でない方が正解ということになります。
施主がそう思っている訳ですから、もうそれ以外の正解なんてない訳です。
と、このようにタイル割りには色々な考え方があります。
全員が同じ考えだとトラブルは少なくなるんですけど、もちろん現実はそうでもなくて、色々な考えの中で調整をしながら仕事をしていくことになるはずです。
そのあたりがトラブルのもとでもあって、でもそこが仕事の面白いところでもあるんですよね。
これは本当に難しいところです。