押出成形セメント板の特徴とは

前回は建物を構成する壁のひとつであるALC壁がどのようなものなのか、そしてどのようなメリット・デメリットがあるのかについて簡単に説明をしました。
既製品であるため施工が早いという特徴があり、さらに軽くて施工性が良く、高い断熱性能を持っているという、かなり優れた建材だと私は思っています。

そして皆が私と同じような感想を持っているはずで、だからこそ色々な建物でALC壁が採用されることになっている訳です。
断熱性能が高いというのはかなり大きなメリットですよ。

ちなみにこれはかなり昔のことですが、ALCが高い断熱性能を持っているということを私が全然知らずに、外壁ALC壁の内側に断熱材を吹く図面を描いたことがありました。
もちろんこれ自体が全然間違いという訳ではありません。

断熱性能を持っているALCを外壁に採用して、そこに断熱材を施工すればさらに断熱性能は高まるのでメリットは確実にあるんです。
ただ、その建物全体を考えた時に、コストのかけ方が偏っているようでは困ります。
私の場合はやはり、コストを全く考えずに図面を描いて…という感じで叱られてしまいました。

適切な性能を適切なコストで。

こうした考え方は、設計よりもむしろ施工側の方が強く持っているんだなと、その時は勉強させてもらいました。
断熱性能というのは、室内の快適さを決める重要な要素というだけではなく、空調にかかるコストを左右する要素でもあります。

これを軽視すると、夏場には暑すぎて快適な空間とは言えなくなり、さらに冷房にかかるコストが大きくなるという非常に残念な状態になってしまいます。
それでは建物を使う人は喜ばないので、最初のコストがやや大きくなったとしても、断熱性能はしっかり確保しないといけません。

まあそれでも外壁ALCに断熱材を吹くべきなのかは微妙なところで、建物全体のスペックに合わせる必要があるという話でした。
叱られた経験というのは非常に貴重なもので、こうした失敗を繰り返して人は知識を増やしていくのだと思います。

そんなALC壁については前回取り上げたので、今回はALCとややキャラがかぶっている気もしますが、押出成形セメント板を紹介します。


■押出成形セメント板

「押出成形セメント板」という名称はちょっと長くて扱いが面倒で、図面内に表現をする際にも結構長くてスペースを取るので困ったりします。
簡単な図面として手描きを使う際にも、文字が長くて書くのが面倒に感じることがあります。

いつからそんなに面倒くさがりになったのか、と思ってしまいますけど…
仕事ではどうしても効率化を意識してしまうので、何度も長い名称を書くことにどうしても抵抗を感じてしまうんですよね。

そう感じているのは私だけではないようで、今ではALCと同じように押出成形セメント板の名称を省略した呼び方が定着しています。
これも材料の特徴をそのまま言葉にして、その頭文字を取った言葉になっています。


Extruded(押し出された)

Cement(セメント)

Panel(パネル)


これらの言葉の頭文字をとって「ECP」と表記されて、以前に比べてかなり一般的になってきたような気が私にはしています。
少し昔であれば、図面上で「外壁:ECP」とか書くと、結構な割合で「外壁ECPってなんですか?」となってしまい困りました。

大抵の方に通じないようでは略語の意味が全く無いので、結局は「外壁:押出成形セメント板」と表記することが多かった。
しかし今はそこまで通じないこともないので、省略することが多くなってきた感触があります。

押出成形セメント板とは何か、という話ですが、これはもうその名前の通りで「セメント系の材料を押し出して製作した材料」ということになります。
もう少し細かくて具体的な表現をすると…

セメント・けい酸質原料および繊維質原料を主原料として、中空を有する板状に押出成形しオートクレーブ養生したパネル。

これが押出成形セメント板、つまりECPの概要になります。
押出成形セメント板の見た目は以下のような感じで、ALCと同じように工場で製作される製品になっていて、中空の構造になっていることが分かると思います。

押出成形セメント板

押出成形セメント板もALCと同じように優れた性能を持った製品なのですが、具体的には以下のような特徴を持っています。。


・耐火性能を持った建材である

・高い耐震性を持っている

・工場で製作してくる為、工事が早い

・中空構造の為、遮音性能もある


これらの特徴のひとつである「工場で製作してくるから早い」というのは、ALCについて紹介した時と同じようなメリットです。
ただ、これは単純に工事のことだけを考えた場合には早いという話で、実際の計画には結構な時間がかかります。

工場で決められたサイズの製品を製作するということはつまり、かなり事前に寸法を決めてメーカーに発注をしておく必要がある、ということを意味します。
だからこそ工事の進みが早い訳で、納まりを検討する側としては、検討のリミットが早くなるという苦しさもあります。

そうした検討やサイズの決定を進めるのが建築のプロということになりますが、時間がないというのはどんな状況でもツライものなんですよね。
これは工場で製作してくる製品全般に言えることなので、押出成形セメント板だけのデメリットという訳ではありませんが…

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