前回は建物を構成する壁の中で、特に室内の壁として採用されることが多い「LGS+石膏ボード」の壁について取り上げました。
建築の納まりを覚える際に、この壁種は結構多く登場することになるため、当サイトでは「LGS+石膏ボード壁」ではなくシンプルに「LGS壁」と呼ぶことにしています。

LGS壁は、LGSと呼ばれる薄い鉄で出来た下地に対して、耐火性能などを持っている石膏ボードを張って壁を構成するという非常にシンプルなものです。
ただ、LGSにはいくつかの規格サイズが存在していて、その下地に張っていく石膏ボードにも色々な仕様の製品があります。

そうした組み合わせを考えていくと、シンプルに「LGS壁」と言っても、その種類は結構たくさんあるということになります。
色々と用意されている仕様の中から、その場所で求められる性能やコストなどを考慮して、それぞれの部位毎に適した種類の壁仕様を決めていく。

建物を設計する際にはそうした検討が必要になってきて、その中でLGS壁というのは採用される割合が高めです。
そういった意味で、LGS壁の特徴や仕様などについてある程度覚えておくと、仕事をスムーズに進めていくことが出来るのではないかと思います。

このあたりの知識は建築関連、特に図面に関わる仕事をしていれば自然と覚えてくるもの。
…なんですけど、これから建築に関する仕事に就こうと考えている方にとっては、自然と覚える機会が少ないという現実があります。

なので、当サイトでは建築関連の仕事に興味がある方のために、まずは知識を得るための協力が出来ればと思っています。
ということで、今回はLGS壁がどのような状態になっているのか、写真を交えてもう少しだけ詳しく説明していきます。

■LGS壁のイメージ

まずはLGS壁がどんな見た目になっているのか、写真でイメージをしておきましょう。
建物が出来上がってしまうと壁の表面だけしか見えない状態になるので、ここでは施工中の写真を使うことにします。
LGS壁のイメージはこんな感じになります。

LGS壁はこんなイメージ

上図の向かって右側に見える黄色っぽいものが石膏ボードになっていて、石膏ボードの端部がビス止めされているのが見えると思います。
板状になっている石膏ボードをビス止めする訳ですから、ビスの裏側にはビスを止める為の相手が必要で、それがLGS下地という感じになっています。

これがLGS壁の基本的なパターンで、あとはLGSの規格寸法や石膏ボードの厚さ、そして貼る枚数などによって壁の性能が変化してくるだけ。
LGS壁の場合は性能の選択肢がたくさんあって、全部のパターンを覚えるのは結構大変な作業になってくると思います。

だけど基本的な壁の構成としては大きく違ってくる訳ではないので、LGS下地に石膏ボードを貼っていくという基本パターンをここではまず覚えておきましょう。

ちなみに、LGSの上部に見える灰色っぽい物体は建物の構造体である鉄骨梁になります。
鉄骨が見えるということはつまり、この建物はS造だということです。
鉄骨の下側に、LGSを固定するランナーを取り付ける為のピースが用意されているのが見えているかと思います。

本体鉄骨に対して現場で溶接をするのはNGなので、本体鉄骨ではない部分に溶接が出来るように、という趣旨でピースを付けているんです。
ちょっと裏側の足場で見づらい状態ではありますけど、この写真でLGS壁のイメージはなんとなく掴めてくるのではないかと思います。

■自分の目で見ることの重要性

建物の設計をしたり、そのための図面を描いたりする仕事をしていると、「実際にどんな材料で施工されるのか」を知っておいた方が良い、という場面が結構出てきます。
プロとして建物を造る仕事をする訳ですから、実際にどうやって建物を造っていくのかを知った方が有利なのは当然のことですよね。

しかし実際には、そこまで意識をしなくても仕事としては問題なく進めることが出来るものです。
今では画像検索という非常に便利なツールがあるので、よく分からない言葉が出てきたら画像検索をすることによって、イメージを含めた知識を補完することが可能です。

これはもう本当に便利ですよね。
でも、経験不足を解消するには積極的に現場へと足を運び、自分の目でどうやって施工されていくかを見る方は良い、というのも事実としてあります。

そうやって自分の目で現場を見ることも大事ですけど、その為の下地となる知識がないと、ただ単に見るだけで終わってしまいます。
それでは残念ながら知識と見聞が自分の血肉とはなりにくいという、なかなか難しい問題もあります。

まずはきちんとした知識を持っていて、頭では分かっているけれど実際には現物を見たことがないんだよな…という状態になる。
そうした人が現場を見てはじめて「あ、実際にはそうなってるのか」という気持ちになり、実際に見たことが経験として価値が出てくる。

そんな流れがベストではないかと。
これは私の個人的な考え方ではありますが、特に知識を持たずに現場を見てもそれほど効果はないと思っています。

もちろん自分の目で現場を見る訳ですから、CADを使っているよりも良い経験になるのは間違いありません。
それでも今までの現場を見てきた方の反応とかその後などを見る限り、単純に現場を見て「すごいですね」で終わってしまうことが多い。

これが私の正直な感想です。
自分の目で見たモノを貴重な経験にする為には、土台となる知識と「どうなってるんだろう…」という疑問が必須なんですよね。