前回はコンクリート化粧打放し仕上について、私の個人的な考えを色々と書いてみようと思ったのですが、あまりポジティブな文章にはなりませんでした。
要するに私はあまりコンクリート化粧打放し仕上が好きではない、ということになるのだと思います。
もちろんこれは特定の建物や個人を批判している訳ではないですよ。
もし自分が施主としてお金を出して建物を造っていく立場だったらどう感じるのか、どういう建物を望むのかを考えてみると…
やはりどうしてもコンクリート化粧打放しは選択肢には入らないだろうな、と感じてしまうので、その理由について考えてみたことを書いてみました。
当然これは個人の感想でしかありません。
コンクリート化粧打放し仕上が非常に気に入っていて、自宅でもぜひ採用したいと考えている方がいる、という事も理解しています。
それだけ魅力的な意匠である訳ですから、マイナス面だけを考えて批判をするのは無粋なことだという事も理解しています。
なので、私の意見はあくまでもひとつの意見として考えて、自分の目で見て感じたことを正しいと信じていきましょう。
色々とある選択肢の中で、どんな仕上を選択するのか。
これは意匠設計者の腕の見せどころでもあって、そうした選択肢の中にはコンクリート化粧打放し仕上も当然入っている訳です。
それを適切な場所に適切な仕上材をそれぞれ採用していくことが出来るかどうかによって、仕事の評価も変わってくることでしょう。
しかしそうした評価をされるためには、やはり一通りの仕上材についての知識を持っておく必要がどうしてもあるんです。
先程も書いたように、設計者あるいは施工者として、それぞれの下地・仕上について納まりの特徴を掴んでおく。
これがプロとして必要とされる知識でありスキルであるのは間違いありません。
そうした趣旨でコンクリート化粧打放し仕上の話を進めてきましたが、そろそろ次の話に進んでいくことにしましょう。
今回はコンクリート素地で、それを意匠的に考えない場合の納まりについて考えてみます。
書くことあるかな、という気もしますが、必ずどこかしらで採用される壁種でもあるので、その特徴だけはしっかりと押さえておきましょう。
■採用する場所の違い
コンクリートを打設した状態で、その上に仕上材を貼らない場合。
それでも呼び方としては「コンクリート打放し」ということになるので、表現としては化粧打放し仕上とあまり違いはありません。
ただしそこには大きすぎる違いがあります。
・コンクリートの表面を意匠的に見せるのか
・壁仕上材を貼る必要がない場所なので結果としてそのまま見えてくるのか
同じコンクリート打放しとは言っても、この二者の違いは非常に大きいですよね。
ちょっとコンクリート化粧打放し仕上と表現が似ていて、説明する順番を間違えたような気もしていますが…
それでもその違いは上記の説明で納得できるのではないかと思います。
もう少し話を続けると、コンクリート打放しとコンクリート化粧打放し仕上とでは何が違うのか、ここで簡単に例を出して考えてみる事にします。
まずはコンクリート化粧打放し仕上との違いですが、採用される場所を挙げていくと、全く意図が違うことが分かります。
・コンクリート化粧打放し仕上:エントランス・メインの外壁など
・コンクリート打放し:機械室・地下ピットなど
要するにバックヤードであまり壁仕上材を貼る必要がない場所とか、特に見た目を気にするような必要がない場所。
そうした場合で、なおかつコンクリートが機能上必要となる場合の仕上げになっている、ということです。
■型枠による違い
コンクリート化粧打放し仕上とは全く用途が違う訳ですから、同じ材料であってもその見た目は全然違ってきます。
なぜ同じコンクリートなのに見映えが変わるのかと言うと、コンクリートを流し込む型枠の種類が違うから。
コンクリート化粧打放しの場合は、以前紹介したように「パネコート」と呼ばれる表面をコーティングした綺麗な型枠を使います。
型枠材は何度も同じ材料を使う「転用」をして、できるだけコストを抑えることを考えていくのが一般的です。
しかし転用することで型枠の表面が劣化するため、転用しないで綺麗な壁を作ることを考えていく訳です。
そして型枠の並べ方にも気を使い、セパ穴も綺麗に並ぶように図面上で検討して施工を進めていくことになります。
しかし普通の打放しの場合には、パネコートではなく標準の型枠用合板を使うので、出来上がりがそこまでツルツルになりません。
型枠の割付などもやらないので、施工しやすい事をメインに考えた型枠の配置になり、セパ穴の位置もやりやすさが重視されます。
似たような表現ではありますが、施工の手間は全然違ってきて、当たり前ですが完成した時の見映えも全然違います。
コンクリート打放しは「素地」とも呼ばれ、納まりを検討するような部分ではないですが、この違いを知って使い分けていくことをここでは覚えておきましょう。