石膏ボードを張る為の下地として利用できるはずのコンクリート壁が、実際にはコンクリート柱と動きが違ってくる。
こうした状況は、主に建物の外壁で構造スリットという考え方が採用される場合に、どうしても避けることが出来ないという感じで発生します。

そのままGL工法で石膏ボードを張った場合には、建物が竣工した後で仕上も表層にひび割れが見えたりする状態になりやすいです。
ひび割れを避けるためには、ちょっと意匠的には今ひとつだけれど、石膏ボードに目地を入れる必要があります。

もしくはGL工法を諦めてLGSを手前に建てる選択をするか、というような話を前回は紹介しました。
どちらの対処方法にも一長一短あるので、場所にあわせてプロとして適切な判断をしていきたいところです。

目地を入れるのは見た目が良くないので、私としてはLGS下地を設ける選択をしたいという気持ちが大きいです。
だけど室内が狭くなる選択をするのもちょっと…という気持ちもあるので、結局悩ましいですよね、という話になってしまいます。

ただ、ボード目地を嫌がってLGS下地を追加するにしても、結局は色々なところにボード目地というのは出てきてしまうものなんです。
完全にボード目地をなくすことは不可能に近いので、それならしっかりとした知識を持って計画的に入れた方が良いという話なんですよね。

この「ボード目地」は一見するとかなり地味な存在ですが、疎かにすると後で結構困る存在でもあるんです。
なので、施工段階できちんとした計画をして進めていく必要があります。

建物が無事竣工を迎えてから半年くらい経過した時点で、壁面に目立つひび割れがたくさん入っているとか。
その結果として石膏ボードの表面に貼っているビニルクロスが微妙に切れそうになっていたり、塗装部分はひび割れがかなり目立っているとか。

そうした状態はクレームの大きな要因になるので、極力そんな状況を避けるべく努力をしていく必要があるんです。
これはクレームが来るとか来ないとかを言う以前の話として、竣工後すぐに壁が汚い状態になるような建物を設計したくないですよね。

そうならない為の方法として、石膏ボードに目地を入れるやり方を前回は紹介しましたが、今回はLGS下地を建てる場合でも目地が必要な場所があるかどうか。
このあたりの話をサラッと考えてみることにしましょう。

■ボード目地のイメージ

コンクリート下地として壁と柱の動きが違うことによって、その下地に直接付いている石膏ボードにも異なる力がかかる。
その結果として石膏ボード表面にひび割れが出来る懸念があって、そうした問題を解消するためのツールとしてボード目地が存在しています。

とは言えボード目地がデザイン的に美しいかというと、まあそんなことはなくて、実際にはあまり好ましいものではありません。
ボード目地のイメージはこんな感じですから、ない方が良いのは間違いありません。

ボード目地のイメージ

上記は室内のドア枠上部に入れているボード目地なので、構造スリット部分に入れる目地とは少し違う考え方です。
つまり開口部の石膏ボードがL型になる部分には、やはりどうしてもひび割れが発生しやすく、ひび割れを防止するためにボード目地を入れるという感じです。

入れる理由は少し違っていますが、目地としての見え方は同じような感じです。
ドアの上部というのは非常にひび割れが入りやすい箇所なので、見た目があまり良くないとは思いますが、こうして目地を入れることが多いはずです。

■LGSを建てるという考え方

こうしたデザイン的に歓迎出来ない目地をなくすためにどうすれば良いのか、という話は以前にも書いている通りです。
考え方は非常にシンプルで、下地のコンクリートと石膏ボードの縁を切ることがまずは考えるべきことです。。

下地の動きが異なることで、その力が石膏ボードの表層に悪影響を与える訳ですから、下地の動きを同じにすれば良い。
ただそれだけの話で、平面図としてはこのような感じになります。

コンクリートと縁を切った状態

コンクリート壁と柱を下地にするのではなく、あくまでも石膏ボードの下地としてLGSを建てていく。
そうすることによって、構造スリット部分にボードに目地を入れないでも、後々問題になることはありません。

ただ、上図を見て頂ければ分かる通り、壁面の両サイドではLGS下地とGL工法が切り替わる部分が発生しています。
つまりLGS下地とコンクリート下地という、動きが違う下地が連続している状態に…

そうなると結局はボード目地が必要になってしまうので、せっかくGL工法からLGS下地に変更しても、あまり効果的じゃないかも知れません。
こんな中途半端なやり方ではなく、全部LGS下地にするということも考えられますが、さすがに部屋が狭くなりすぎですよね。

などなど、目地に関してはもう少し検討が必要になることが多いです。
ただ、これ以上の詳しい話は、別のカテゴリで詳しくやっていくことにして、壁仕上の項目としてはこのあたりで終わりにしておきましょう。