床仕上材の下地には幾つかの種類がありますが、人や家具などの荷重を受けるという役割があるため、基本的にはコンクリートである場合が多いです。
そして床仕上材の厚みはそれぞれの製品によって様々な厚みがあります。
そして床仕上材自体の厚みにプラスして、その床仕上材を施工する方法によっては施工の為のスペースが必要になる場合もある。
前回は床仕上材の納まりを検討する際のポイントということで、そのあたりの内容を説明してみました。
床仕上材の納まりポイントについての説明は残りあと少しですが…
・床を貼った後で段差になるのはNG
・コンクリートは工程の序盤になる
・だから事前にきちんとした検討が必要
これらの項目がまだ残っているので、今回は仕上材毎の納まりと床表面の段差について考えてみたいと思います。
■床を貼った後で段差になるのはNG
床仕上材の厚みは選定した製品によって違ってくる、という話は前回の説明で書きましたが、最終的に床が仕上がった状態で段差があるのはNGです。
床仕上材の表面は余程のことがない限りフラットが標準です。
これは建物を利用する立場からものを考えてみれば当たり前の話ではないかと思います。
例えばの話として「ここからは床仕上材が石になるため、石の厚み分だけ床に段差が出来ますので注意してください」とか言われても困りますよね。
厚みに違いがあるのなら、その厚みを考慮して建物を造ってくれと思うはず。
床の表面に段差が出来てしまうと、それがほんの少しの微妙な段差であればある程、躓きやすくて危険な場所になってしまいます。
階段のように明確な段差で躓く人はそれほど多くないんですけど、何でもないところにある10mmの段差とかは危険なんです。
いくらデザインが優れていたとしても、人が躓きやすいような場所が各所にあるというのは、建物として問題があります。
車いすでの利用もしにくいですし。
そもそもの話として、床の表面に細かい段差がたくさん見えてしまうような建物では、内装のデザインとして決して優れているとは言えないですよね。
なので、使い勝手と見た目という両方の観点から、床仕上材の表面には床仕上材の違いによる段差を出さない、という考え方が基本になります。
少なくとも建物内に段差がたくさんある建物は、その建物を利用する人の安全を考慮していないということになるので、デザイン云々以前の問題があると私は思っています。
そうならない為に、どんな床仕上材を採用するにしても、表面は段差なしの状態にしておく。
これはかなり当たり前の話ではありますが、建築のプロとして最低限やるべき仕事になると思います。
■バリアフリーを守る為に
建物の各室ごとにどのような床仕上材を選定したとしても、最終的に仕上がった状態で、表面には床仕上材による厚みの違いを感じさせないようする。
つまり床の表面はフラットな状態でなければ、建物を使う側にとっては不便でしかない建物ということになって、デザインが優れているとか以前の建物になってしまう。
これは確かに当たり前のことですけど、建物を設計したり施工をする側の立場で考えてみると、その当たり前を守るのは結構大変です。
厚みが色々ある製品の表面を最終的には揃える、ということはつまり、下地の位置を厚みによって調整しなければならないということなので…
それを実現するためには事前に色々な検討が必要なんです。
床仕上材の厚みがいくつになるかを調べたり、品番によって厚みが違うタイルなどであれば早めに製品の決定をしたりとか、やることは色々あります。
そうした検討や調整を細かくやっていき、具体的な納まりがどうなのかなどを事前に検討しておいて、床仕上材を施工する段階でようやくフラットになる。
床が仕上がった段階では、もう色々検討した下地のレベルなんて見えなくなってしまいますけど、下地の検討というのはそういうもの。
そんな最終的に隠れてしまう下地を作る為に、事前に図面でどうなるかの検討をしておく必要がある、ということです。
これは床仕上げ材の納まりを検討する上で、非常に重要なポイントになってきます。
場所によっては床仕上材が異なることをまずはしっかりと把握して、床仕上材の部位によって下地のレベルを変えていく必要がある。
これが納まり検討のポイントなんです。
特にここ最近は、車イスの通行に支障がないようにということで、バリアフリーで納まりを検討することが当然だという認識になっています。
誰でもその建物を利用することが出来るように、というポリシー自体は良いことだし、どんどん推し進めた方が良いとも思います。
しかし納まりを考える側の立場として考えると、そのバリアフリーを実現する為に、図面を作図して検討を進める段階で結構な苦労をすることになる。
これはもう仕方がないことなので、建築のプロとしてそこはしっかりと検討していきましょう。
余程のことがない限りは床に段差を設けない。
この鉄則を守ろうとすると、色々なところに気を遣う必要があって、なかなか大変な部分もあったりします。
だけどそれが建物としての基本スペックになる訳ですから、検討することは決して無駄ではないという話でした。