コンクリート化粧打放し仕上の壁は確かに美しく仕上がって、非常に洗練された雰囲気の建物が出来上がる可能性があります。
その代わりに持っているリスクとして、外壁で採用する場合は内側に断熱材を施工することが出来ない、という問題点を前回は紹介しました。
建物の外周に断熱材が有るか無いかというのは、その建物を快適に利用することが出来るかどうかを左右する、かなり大きな要素になります。
これによって、室内の温度がどの程度外気に影響されるのかが大きく変わってしまいます。
建物の見た目を優先した結果として、建物を快適に利用するために必要不可欠な要素である断熱材の施工ができなくなる。
これは非常に大きな問題というか、比べるまでもない問題ではないかと私は思っています。
特に自宅の居間など毎日過ごすような場所であれば、デザイン性よりも快適さの方がはるかに重要な要素になってくるはず。
少なくとも私は建物に対してそういう考えを持っています。
もちろん考え方は人それぞれですから、刺激的な空間に住みたいと思う方がいても、それがダメとかおかしいとは思いません。
でも、やっぱりデザインというのは求められる機能を満たしてから始めて検討されるべきものではないか、と思ってしまいます。
私の自宅であれば、別に石膏ボードにクロスでも全然構わないので、冬に寒かったり結露などがない空間としたいものです。
こうして考えると、建物を設計する仕事というのは、かなり責任重大ですよね。
さて、前回紹介した問題点にはまだ説明出来ていない項目が残っていました。
・コンセントやスイッチなどを埋め込むのが大変
・材質としては冷たくて固い
壁として質感が冷たいというイメージはさておき、今回はスイッチ関連の埋め込みについてもう少し考えてみたいと思います。
■スイッチの埋め込み
人が建物を利用する場合のことを考えてみると、時間的には日中利用する場合と、夜に利用する場合があります。
オフィスであれば日中に利用することが多くなるはずですし、マンションなどの住戸では夜に利用することが多くなると思います。
そして建物を利用している期間、恐らく人がいる場所には照明を点灯することになります。
日中であっても仕事をする場合は太陽光だけでは足りないので、ほぼ間違いなく天井についている照明器具を使うことにあるはず。
また、照明だけではなく、空調も場合によってはONにしたりOFFにしたりを繰り返すかも知れません。
…と、ここでは何を言いたいのかというと、建物内には人が利用するための照明スイッチや空調スイッチ、あるいはコンセントなどがある、という話です。
そしてこれも当然のことですが、スイッチやコンセントというのは、壁の中に埋め込まれている場合がほとんどです。
壁に埋め込まれたスイッチのイメージはこんな感じです。
トイレなどの部屋によってはスイッチがなくて、人感センサーによって照明が点灯したりもしますが、自宅などは大抵の場合このようなスイッチで操作をするはずです
上記写真はあくまでも一般的なスイッチのイメージで、これは石膏ボードの壁にスイッチの中身が埋め込まれた状態になっています。
しかしコンクリート化粧打放し仕上を採用した場合には、こうじたスイッチを壁に埋め込むのがかなり大変になってくるんです。
■位置が決まるかどうか
コンクリート化粧打放し仕上では、壁にスイッチを埋め込むのがかなり難しい。
その理由は以前紹介した話とダブリますが、コンクリートを打設した段階でもう壁仕上として決まってしまうから、というシンプルな理由です。
コンクリートを打設する段階でスイッチやコンセントの位置を決めておき、コンクリートを打設する前段階でボックスを埋め込んでおく。
これがコンクリート化粧打放し仕上の壁にコンセントなどを埋め込む方法になりますが、これがやっぱり結構難しいんですよね。
コンクリート打設は建物を造っていく工程のかなり序盤にありますが、その段階でプランが決まっているかどうかは微妙なところです。
また、プランが決まっていたとしても、さらにスイッチやコンセントの位置まで確定しているかというと…
これはもうなかなか難しいと言うしかありません。
コンクリート壁の中に配線を通す配管を入れてしまう為、一度決めたスイッチ位置の変更することは簡単ではありません。
なので、しっかりと事前に図面検討を重ねておき、ある段階になったら思い切って「ココに入れる!」と決めないといけない。
しかも工事の序盤に。
石膏ボードの壁であれば、床コンクリートを打設して外壁を施工した後で始まるので、タイミングとしてはかなり後の方になります。
だけどコンクリート化粧打放し仕上の場合は…
というあたりが、表面の仕上がりクオリティという問題とあわせて、コンクリート化粧打放し仕上を難しくしている要素なんです。
と、問題点を今まで色々と書いてきましたが、次回からはそれでも採用する場合に、検討すべきポイントについて考えてみたいと思います。