コンクリート壁納まりのひとつであるコンクリート化粧打放し仕上は、綺麗にコンクリートを打設することが出来れば、非常に洗練された見栄えの建物が完成します。
しかしその為には色々な苦労があるので、前回は考えられる問題点がどのあたりにあるのかを取り上げてみました。

・施工時期の早い段階で仕上を考慮する必要がある

・一発勝負という怖さがある

これらの要素はコンクリート化粧打放し仕上の問題点というか、単純に施工する側が大変に感じることだとも言えます。
ちょっと悪意のある表現をすると「そんなに早い段階で最終仕上の状態まで検討出来ないし、失敗したらやり直しがきかないから困る…」というニュアンスでもあります。

そうなると、こちらも少々悪意のある表現で、設計者側の立場からは「そんなことは施工者側の都合だからしっかりやってください」と。
そんな気持ちになりがちなんです。

施工者と設計者とでは、お互い立場や仕事の内容がかなり異なるため、どうしてもこうした意見の食い違いが発生します。
どちらかの意見が完全に間違っているようであれば判断は楽なんですけど、実際にはどちらの意見もまずまず正解なんですよね。

なので、お互いの主張をすり合わせつつ、お互いが納得する着地点を探す必要がある、というのが結構大変だったりします。
もちろん建物をつくっていくための方針を決めるのは設計者なので、設計者が「こうしたい」という思いを施工者はできるだけ実現すべく頑張ります。

しかし設計者の思いがあまりにも現実的ではない場合、意図するデザインが実現できない可能性が高くなってしまいます。
頭の中にある考えが絵に描いた餅にならないためにも、ある程度は施工に目を向ける必要も当然あると思います。

とは言っても、「これはどうやって施工するのか」とか「これでは人が入れない」など、施工の問題点をあまりにも意識し過ぎるのも問題ではあります。
施工性ばかりを考えてしまうと、今度はデザインが悪くなりがちという問題もあるので、このバランスが難しいところです。

施工が非常に難しいことは間違いのない事実ではありますけど、コンクリート化粧打放し仕上が出来上がったときの雰囲気が良いのもまた事実なんです。
それを、施工が大変だから化粧打放し仕上は止めて吹付にする、みたいな乱暴な意見が通ってしまうようでは…

それでは意匠設計者が必要なくなってしまいます。
今回はそんなコンクリート化粧打放し仕上の壁で、まず出てくる納まり上の問題点を考えてみることにしましょう。

■化粧打放しの問題点

コンクリート化粧打放しというのは、そのままコンクリートが直に見えてくる仕上で、高い意匠性を持っています。
しかしコンクリートがそのまま見えてくることで、意匠性と引き換えにして、本来ならば出来る色々なことが出来なくなるという問題もあります。

具体的には以下のようなことが、コンクリート化粧打放し仕上では難しくなってしまいます。

・外壁の室内側を化粧打放しにする場合は内断熱が出来ない

・コンセントやスイッチなどはコンクリートに埋め込む必要があり大変

・材質としては冷たくて固い

こうした問題にはそれぞれ解決方法があるとは思います。

内断熱が出来ないのなら外断熱を考えるとか、スイッチを埋め込むのは大変ではありますが可能なのでよく計画するとか。
冷たいイメージも周囲の仕上で色々とフォローが出来るとか、そもそもそうしたイメージを求めているから問題ないとか。

このように、コンクリート化粧打放しが持っている問題は、色々な考え方でうまくやることが出来る可能性があります。
ただ、その分だけコストや手間がかかることになる、というのは間違いありません。

それでもコンクリート化粧打放し仕上を選択するのか、というのは結構大事な話だと私は思っています。
ここからは、もう少しそれぞれの問題点について考えてみましょう。

■断熱材の重要性

基本的に建物の外壁というのは、外部から室内に入ってくる外気温度を遮断する為に、断熱材を吹き付けます。
夏の厚さや冬の寒さを防ぐという目的、外気と室内温度の差が大きくなることで発生する結露を防ぐという目的が断熱材にはあります。

断熱材のイメージ

断熱の考え方と施工方法は、外壁の室内側に発泡ウレタンなどの断熱材を吹き付けるというもの。
もちろんやり方によっては外壁側に断熱材を施工する場合もありますが、コストなどを考えると内断熱が一般的です。

しかし部屋内側をコンクリート化粧打放しにしたい場合、断熱材を吹き付けることが出来ません。
もちろん物理的には可能ではあるんですけど、見た目という意味でその選択肢は絶対にないはずです。

そうなると、せっかく高い意匠性を持った壁なのに、他の部屋に比べて冬は寒さを、夏は厚さを感じることになる訳です。
これは結構厳しいものがあります。

そして結露の問題も大きなポイントです。
いくら高い意匠性と言っても、冬に毎日結露で壁が濡れている状態を見て、格好いいと感じる人は少ないはずですから。

その結露が原因で壁にカビが発生する場合もあって、そうなったら意匠的にはプラスどころか全然マイナスになりますよね。
高い意匠性を持った壁ではありますが、コンクリート化粧打放しの壁というのは、そうしたリスクを負った仕上なんです。