床仕上材として最も一般的な床塩ビシートについて、前回はまず呼び方をどうするか、という話から色々と書いてみました。
何かについて説明をする際には、その説明をする対象の表現をある程度統一しないと意味不明というか、何を言っているのかが分かりにくい。
そういう残念な状況にならない為にも、まずは説明していく際の表現を「床塩ビシート」に統一する事にしました。
私が今まで経験してきた中では「長尺シート」という表現が一番多かった感触があるので、そちらの表現でも良かったんですけど…
正直言って説明を読む側からすると分かりにくいと感じたので、長尺シートではなく床塩ビシートにしておきました。
まあ結局はどちらでも問題はないんですけどね。
…と、そうした呼び方についての細かい話はともかくとして、問題は床仕上材としての特徴と納まりの方ですよね。
なのでどんどん話を次に進めていきましょう。
まずは床塩ビシートの特徴について考えてみることにします。
■床仕上材としてのグレード
このカテゴリで取り上げる床塩ビシートですが、床仕上材としてはどの程度の位置というかグレードなのかというと…
まあ正直なところ、グレードとしてはあまり高い部類には入りません。
床塩ビシートが採用される部屋としては、バックヤードの廊下とか倉庫とか、スタッフ用便所などが挙げられます。
これらの部屋がどのような仕上材になっているかを少し想像してみると、何となく床塩ビシートの床仕上材としてのグレードが分かると思います。
床や壁の仕上グレードがあまり高くなくても特に問題ない、という日常使いの部屋に床塩ビシートは採用される事が多い。
そんなポジションの床仕上材になります。
安価で使い勝手が良く、そして見た目もそれほど違和感がない床仕上材、というイメージを持っておけば正解に近いです。
ただ、床仕上材のグレードというのは、見た目とかコストだけで判断するものではありません。
他に検討する項目としては、例えば「掃除のしやすさ」とか「汚れが目立ちにくい」とか「床材としての耐久性」などがあります。
床仕上材はこうした特徴も考慮されるので、一概にグレードが低いから使いたくない、は言えない部分があるんです。
グレード感や見た目だけを考えて床仕上材を選定すると、例えばフードコートの床仕上材としてカーペットを選定したりします。
たしかにカーペットは床仕上材としてのグレードがやや高めで、質感や模様などを見ても床塩ビシートよりも高級な床仕上材です。
でも恐らくフードコートに敷く床仕上材としては失格です。
フードコートは不特定多数の方が食事をする場所で、小さい子供が食事をすることも多いはず。
そんな場所に美しい模様のカーペットを敷いても、すぐにラーメンとかうどんとかの汁をこぼされてしまい、完全に拭き取れないまま汚れていくのが目に見えています。
そうなると、例えば半年後に床がどのような状態になっているかを考えると、きちんとモップなどで清掃出来る床塩ビシートの方が美しさを保っている可能性が高い。
これは少し極端な例ではありますけど、グレードだけではなくその部屋に適しているのかにも注目しなければならない、という話でした。
■床塩ビシートの特徴
先ほども少し触れましたが、床塩ビシートの特徴はどのような部分にあるのかというと、大体以下のような点が挙げられると思います。
・比較的低コスト
・耐水性に優れている
・材質はやや硬め
・厚みが2mm程度と薄く施工性に優れる
・キズがつきにくくメンテナンスが容易
・耐摩耗性など耐久性に優れる
・デザインの選択肢が広い
・帯電防止や耐薬品などの性能を付加出来る
・見た目に高級感はあまりない
コスト的なメリットがあって施工性が良く、さらに耐久性に優れるというあたりを見ると、かなり機能的な仕上材だということが分かります。
実際の建物では、床塩ビシートが採用される部屋が結構多いのですが、それは上記のような優れた特徴を持っているからなんです。
しかしその一方で、柄などのデザインが豊富とは言え、高い意匠性を持っているとは言えない部分も特徴として持っています。
材質が硬質であることも含めて、例えばリビングで積極的に使いたくなるような床仕上材ではない、というイメージですね。
仮に私の自宅でリビングに敷く床仕上材をどれにするか考えてみると、床塩ビシートを選定する確率はほとんどないと思います。
ただ、だからと言って床塩ビシートが床仕上材として劣っているということではなく、そうした特徴が歓迎される部屋で選定すれば良いだけの話です。
床仕上材にはそれぞれ特徴があって、良いところはそれぞれ違います。
床塩ビシートは見た目があまり高級ではなく、カーペットが持っている意匠性がないからダメだとか、そう言うことではありません。
意匠性は劣るかも知れませんが、カーペットが持っていない特徴を持っているので、むしろ床塩ビシートを使った方が良い、という部屋はたくさんあるはずです。