前のカテゴリでは、床仕上材として色々な場所で採用されるビニル床タイルの納まりについて色々と紹介をしてきました。
その中で、基本的な納まりとしては床下地であるコンクリートに直接接着剤で貼るシンプルなものになる、という話があったかと思います。
だけどビニル床タイルの場合、コンクリート下地に直接貼る納まりだけではなく、OAフロアの上に敷く場合もあります。
納まりとしてはそこまで複雑ではありませんが、コンクリートと床仕上材の間にもうひとつ何かが入るという別の納まりになる訳です。
このあたりの話は今回のカテゴリで紹介するタイルカーペットも同じなので、今回は簡単にOAフロアについて話をしてみたいと思います。
■歩行感の違いもある
OAフロア下地に床下地材を敷いていくという納まりになる。
そのため、建物を使用する際には既に床が仕上がっている状態になっていて、床下地がOAフロアなのかどうかは結構分かりにくくなっています。
床下地ですから最終的には見えなくなってしまうのは自然なことですよね。
OAフロアの範囲を知りたければ施工する際の図面を見るか、もしくは全体的に床仕上材をはがして見るかのどちらかです。
床コンクリートに比べるとOAフロアは下地としての重量感がないので、歩くときの音を聞いたりジャンプして着地をしてみたりすると感触とか音とかで何となく分かります。
まあ普通の人はあまりそういうことはやらないかも知れません。
だけど実際にはこの「音」とか「歩行感」というのは、建物にとって結構重要なものでもあるんですよね。
設計者の中には、こうしたOAフロアやフリーアクセスフロアと呼ばれる「二重床」の歩行感を嫌う人が結構います。
確かにOAフロアの床を歩いていると音が大きく聞こえがちなので、使う部屋によっては気になるかも知れません。
実際には建物を利用する側からすると、歩いた時の感触を気にする人ってあまり多くないんじゃないかとは思いますが…
私がよく利用する図書館は恐らくOAフロアになっていて、かなり静かな空間に歩行音が響いてしまい気になって仕方がありません。
建物全体について細かく考えていく設計者や施工者であれば、そうした「歩行感」を気にすることは全然悪いことではないと思います。
…と、ちょっと変な話になってしまいましたが、OAフロアについての話を続けていきましょう。
■OAフロアとモール
OAフロアというのは床下に配線を通すことが出来て、なおかつ後でそれを自由に変えることが出来るという特徴を持っています。
そうした特徴から、特にオフィスビルではほぼ間違いなくOAフロアが採用されることになります。
事務所としてオフィスビルの一画を借りた際に「床コンセントはどこにもありませんよ」となったらどうなるか…
机を全部壁際にする訳にはいかないので、部屋の中央にある机には床上のモールで配線をまわすしか手段はなくなってしまいます。
今時のオフィスで床上モールはちょっと…使い勝手や見た目としてあまり良くないです。
モールというのはこんな感じの商品です。
床上に転がす配線が踏まれて痛まないようにという目的と、コードに足を取られて転ばないようにという目的がモールにはあります。
まあ安全面では必要な措置ではありますけど、意匠的には出来るだけ避けたい納まりですよね。
もちろん見た目だけではなく使い勝手なども考えると、モールがベストとはとてもではないですが言えないです。
だからこそコンクリートスラブを下げておき、そこにOAフロアを設置して床下に配線をする納まりで設計をしていくことになる訳です
■OAフロアの納まりパターン
そんなOAフロアですが、建築の納まりを考える側としても、OAフロアだとあれこれ悩まなくて済むというメリットがあります。
もちろん建物を設計することを仕事にしているプロが「考えるのがイヤ」とか、そんな次元の低いことを考える訳ではないですよ。
そうではなくて、OAフロアはある程度納まりは決まってしまうので、それほど悩んでしまうような納まりにはならない、という話です。
基本的にOAフロアを採用する部屋は、あらかじめコンクリートの床を下げておく、という処置が必要になってきます。
あるいはOAフロアの部屋だけ床仕上の高さを上げるかのどちらかですが、例えば廊下から室内に入ることを考えると、床仕上レベルを上げるのはあまりお勧め出来ません。
そうなると必然的に床コンクリートのレベルを下げることになる訳です。
そうなると、床仕上材としてどのような製品を採用したとしても、OAフロアの範囲はコンクリートレベルを下げておくという関係が出来上がります。
OAフロアを採用する部屋では、下地コンクリートのレベルについてあれこれ悩まなくて済む、というのはそういう理由からです。
床仕上材について考えてみると、OAフロアを採用した場合の床仕上材にはそれほど多くの選択肢がないという現実もあります。
前回紹介した置敷ビニル床タイルと、今回紹介するタイルカーペットのどちらかになる場合がほとんどではないかと思います。
ちょっと話が長くなってしまいましたが、ここでようやくこのカテゴリで説明をしたいタイルカーペットが登場しました。
タイルカーペットの納まりについては次回に詳しく説明をしたいと思います。