床塩ビシートは下地である床コンクリートに直接貼る工法がほとんどの為、下地の不陸(平滑ではない状態)がそのまま表れてしまう。
もちろんそこまで凸凹が出ないようにという目的で、コンクリートスラブを打設した後で左官屋さんがしっかりと補修をするんですが…

結局は人の手でやるものですから、これがなかなか完璧にはならないのが現実です。
そうした現実があるので、目立つ部分でどうしても平滑に仕上げたい場合には、セルフレベリング材の採用も選択肢としてはあると思います。

そんな話を前回は紹介しましたが、もちろんセルフレベリング材はタダではなく、むしろ結構高額な出費になるものです。
材料代と手間と時間を余分に掛ける分だけ結構コストは増えてしまいますけど、最終的な仕上がりはより綺麗になります。

なので場合によっては検討の余地があるのではないかと思いますが…

床塩ビシートを採用するくらいの部屋で、どうしてもここだけは平滑に仕上げたい、と思ってしまうような部屋がどれだけあるのか?
そんな素朴な疑問をされた場合、正直言って私は返事に困ってしまうという話もあります。

実際の話として、スタッフゾーンの休憩室とか倉庫などで床塩ビシートを採用するとして、そこを完璧に平滑にする必要があるのか。
そう考えると、答えはNOではないかと思います。
ちょっと表現は良くないですけど、ある程度平らになっていればそれでOKという部屋ではないかと。

その一方で、例えば病院や学校などで長い廊下がずっと続いていて、その廊下にある窓から入る光によって表面の凹凸が非常に目立ちそう。
そんな場所であれば、設計段階でセルフレベリング材を見ておいても良いんじゃないかと思います。

もちろんコストとの相談が必須ですから、最終的にセルフレベリング材を施工するかどうかはまた別の話ではありますけども。
今回はそんなセルフレベリング材を採用する場合、どんな納まり断面図になるのかを紹介してみたいと思います。

■コンクリートスラブ天端

セルフレベリング材を施工する場合、コンクリートスラブと床塩ビシートとの間に別の材料が入ることになります。
だから、コンクリートスラブの天端レベルは、あらかじめ少しだけ下げておく必要があります。

大体10mmくらい下げておけば問題なく納まる感じです。
もう少し寸法があった方が手堅く納まるんですけど、セルフレベリング材の厚みが増えれば材料費が増えるという問題があります。
なのであまり深くしすぎない方がコストを考えると良いでしょう。

コストを意識したいく中では、10mmではなくもっとギリギリを狙って出来るだけ安く施工を進めたい、という考え方もあります。
その場合は5mm程度に設定して施工を進めても良いんですけど、図面上では5mmでも問題なく納まるけれど、実際は少し心配というのが本音でもあります。

コンクリートスラブの不陸が5mmを超えて大きい場合には、セルフレベリング材で調整出来る厚みを超えてしまい、完全に水平になってくれません。
5mmを超えて出っ張っている部分はそのまま残ってしまう訳で、そうなるとあまりセルフレベリング材の意味がなくなってしまいます。

せっかくセルフレベリング材を施工するのに、床の不陸が解消しない。
これでは本末転倒というか、あまりにも勿体なさすぎるので、やはりリスクを回避するために10mmは見ておいた方が安全ではないかと思います。

そのあたりの判断は施工者側が一番適切に出来るはずです。

■セルフレベリング材の断面図

セルフレベリング材はかなり高い精度で床下地レベルを設定することが出来ます。
まさに「水平とはこのことか」という感じで仕上がってくれるので、以前話に出た仕上天端でFL±0にすることも可能です。

その場合の内訳は、コンクリート天端レベルがFL-10、セルフレベリング材の天端レベルがFL-2、床塩ビシート天端がFL±0になります。
断面図だとこんな感じですね。

セルフレベリング材の納まり

もちろん施工精度が比較的高めとは言っても、上図のような完璧な水平というのは実際には難しいというか不可能という感じではありますが…
そうは言っても肉眼で見て「これは間違いなく水平だな」というレベルにはなるので、かなり綺麗に床が仕上がってくれるはずです。

どの程度水平になるのかは写真を見ればすぐに納得するはず、ということで、セルフレベリング材を施工する際の写真を紹介しておきます。

セルフレベリング材の施工状況

セルフレベリング材はこんな感じで材料が広がっていくんです。
上図を見て頂ければイメージ出来ると思いますが、セルフレベリング材は材料の流動性が高いので、後は自然に水平になってくれるという仕組みです。

こうした性質を持った材料を流していく関係で、例えば常時強風が吹き込んでくる場所などでやると上手くいきません。
また、当然雨が当たるような場所でも施工出来ないので、内装工事が始まった段階くらいに施工をすることになります。

その段階では外壁が出来上がって窓が設置されているはずなので、雨や風の影響はなくなっているはずですから。