床塩ビシートを実際に施工する際に、下地としてコンクリートスラブのレベルをどのように設定しておくのが正解なのか。
このあたりの話を前回は取り上げましたが、これは実際にやってみると少しだけ悩んでしまう問題でもあるんです。

律儀に床塩ビシートの厚み分だけ下げるという方針で、FL-2をコンクリート天端とするのか、現実的な施工精度なども考えてFL±0に設定するのか。
これはこちらから話題を振っておいてこう書くのも変ですけど、最終的にはどちらの方針でも仕上がりは変わらない、という現実があります。

ただ、設計図をまとめる際、もしくは施工者側がコンクリートを打設する前の段階で、こうした基本的な方針を決めておいた方が良いです。
今回の話は正直言って「どちらも正解であり不正解でもある」という類いの話で、要するに人によって正解と思う内容が違ってくるんです。

そうなると人によっては「これは違うんじゃないのか」という話が出てきて、その際に方針が決まっていないと面倒なことになってしまうんです。
これは今までの経験上そうなので、そうした面倒を回避するためにも方針を最初に決めておくことが重要ではないかと思います。

結局は施工精度の問題があるので、FL±0を狙ってもFL-2を狙っても、最終的な見映えとしてはあまり大きな違いはありません。
だとしたらもう一方の方針に決めておいて、後で手戻り的な修正がなくなるようにすると、業務が効率的に進みます。

もちろんそうした方針を決めたい検討項目に対して、自分が決定権を持っていない場合も多々あるとは思います。
その場合は、決定権がある人に考えられる案を提示して、その人に「これでやろう」と決めてもらうのがベストです。

だれがこの納まりを決めたの?

特に若い方の場合は、そんな感じのことを言われるシチュエーションが結構あるんじゃないかと思います。
その時に名前を出して威力がある人に決めてもらうのがベストです。
まあこれはちょっとサラリーマン的な話でイヤですけど、自分の身を守るのも大事なことですから。

どうせいずれかの方針で決めなくてはいけないのなら、ジャッジできる人を味方に付けておいた方が良いですよね。
そうすればあまりストレスを感じることなくスムーズに仕事が進められます。

とまあそんな保身の話はさておき…
今回は、床下地であるコンクリートの天端レベルを決める際に、もうひとつ考えておくべきことについて書いてみます。

■下地の影響を受けやすい

コンクリートスラブを下地として、そこに接着剤で仕上材を貼っていく、というのが床塩ビシートの一般的な納まりになります。
下地であるコンクリートに直接貼る訳ですから、二重床などの下地を設けるよりも施工手間は少なくて済む。

これが直貼り仕上のメリットなんですけど、施工手間が少ないと言うのは何も良いことばかりではありません。
コンクリート下地に直接貼るということはつまり、その下地の状態に大きく影響を受けてしまう、ということを意味しているんです。

なので、床下地であるコンクリートスラブの天端がどれだけ平滑になっているか、という部分がかなり重要になってきます。
あまりにも精度が良くない下地にそのまま床塩ビシートを貼ると、最終的に床塩ビシートが仕上がった時に「え?」と言いたくなる状態に。

これは結構悲しいです。

特に長い廊下を端から見た時とか、光を反射するような場所などでは、床の凹凸は結構目立ってしまうんです。
これは設計者や施工者からすれば「まあそんなこともあるよな…」と理解は出来るとは思いますが、施工の都合をあまり知らない施主からすればなかなか納得出来るものではないはずです。

■セルフレベリング材

最終的な床仕上材が凸凹になりすぎている、という悲しい状態にならない為にも、施工者側としては床の天端レベルをキッチリと押さえて施工していく訳ですが…
実際にやってみるとこれがなかなか上手くいかない、という現実があります。

そこで、どうしても床塩ビシートを平滑に仕上げたい場合には、セルフレベリング材の採用を検討するという手もあります。
セルフレベリング材というのは何かというと、打設済みのコンクリートスラブ上に流しこむ流動性の高い床下地材です。

セルフレベリング材

流動性が高くてある程度素早く硬化する為、コンクリートに比べるとかなり高い精度で平滑な面を作ることが出来ます。
鍋に入れたカレーよりも、鍋に入れた味噌汁の方が流動性が高いので、何もしなくても鍋の表面は水平になりますよね。

カレーはちょっとドロドロしているので、そのままの状態では表面を完全に水平に持っていくのはかなり難しいです。
まあこれはちょっと強引なたとえ話ではありますけど、カレー=コンクリート、味噌汁=セルフレベリング材に置き換えて考えて頂けると分かりやすいと思います。

この例えで考えると、カレーの上に味噌汁を流し込むというカオスな状況が発生しますけど、液体の流動性の部分だけ考えてみてください。
こうしてセルフレベリング材を採用することによって、手間とコストは掛かりますが、上手くやれば本当に綺麗な床下地面が出来上がります。

セルフレベリング材を採用する為には、どんな用意をしておけば良いのか、という話は次回に続きます。